鬼灯 | ナノ



「椎蓮さん!」
「あら、雷蔵に三郎。久しぶりねー」
「お久しぶりです!」


食堂で昼食を堪能していると、同じ顔をした二人が声を掛けてきた。昨日は何だかんだで上級生には会わなかったのだ。


「雷蔵は迷い癖、治った?」
「ま、迷い癖ですか…、えっと…」
「相変わらずですよ」
「ふふ、そのようね」


二人は昼食を持ってわたしの両脇に座った。今の時間なら周りに空いてる席あるのになあ。楽しく談笑していると、今度は五年い組の二人が昼食を持って目の前の席に座った。


「あらあら兵助に勘も」
「お久しぶりです、椎蓮さん!ホントに教育実習生なんですね」
「そうよー。信じてなかったのー?」
「や、なんか実感なくて」


うん、まあわたしもまだ実感ない。ていうか教師らしいこと一つもやってないから当たり前と言えば当たり前なんだけど。


「ハチは?」
「ああ、なんかまた毒虫が逃げ出したらしくて捜してます」
「あら…また逃げ出したの。昼食に間に合うの?」
「大丈夫だと思いますよ。今回は軽い方だって…あ、噂をすれば」
「お前ら、少しくらい手伝ってくれても…って椎蓮さん!!」
「お疲れさま、ハチ」


これで仲良し五人が揃ったわけだ。うん、賑やか賑やか。


「ところで、椎蓮さんは午後何か用事がありますか?」
「んー、午後は二年生の授業に入るよ」
「あ、そうなんですか…」
「何かわたしに用があったの?」


五人が一様に反応するので、どうやら何かあるらしかった。残念ながら今日一日は二年生の授業に組毎に出ているから、午後まで時間が埋まっているのだ。


「町に行くので、椎蓮さんもどうかと思って」
「あら、嬉しいお誘いね。ごめんね、お土産待ってるよ」
「早速物ですか」
「勿論。田中の甘味屋がおいしいって聞いたの。よろしくね」
「わかりましたよー」


うんうん。少し拗ねてしまった三郎の頭を撫でると、驚いた表情をした後、恥ずかしそうに下を向いてしまった。でも振り払わないから撫でてもいいのだろう。可愛いなあ。すると反対側に座る雷蔵に裾を引かれた。上目遣い、やるね。


「……負けたわー」
「えへへ」
「椎蓮さん俺も!」
「あら」
「俺も!」
「私も」
「あらあら」


どうやら五年生になっても甘えたなのは変わらないらしい。成長は嬉しいけど、こういう子供らしい所は変わらないで欲しい。わたしは、そういう変わっていく子供達が甘えられる拠り所でありたいと、身勝手に思っている。

だって子供は大人に甘えて我が儘を言うべきなのだ。忍になればそれは寧ろ仇にしかならないから封じ込めなければならない。ならば帰ってきた時、彼らがそれを一時でも思い出して見せてくれたら、わたしは幸せなのだ。子供の笑顔ほど癒される物はない。


「(まあ、彼らは笑顔を忘れるような忍にはならないだろうから、心配はいらないか)」


この絆があれば大丈夫。学園という環境があってよかったと、改めて実感した。
110205
ギャグがない。ギャグが思いつかない。これはやばい…。
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