鬼灯 | ナノ



挨拶もそこそこに(はしょったわけじゃないよ、だって皆わたしのこと知ってるし)、早速今日から授業に就く事になった。主に上級生の実技を担当する予定だ。そのため今回は四年生の学年合同実習に参加した。場所は裏々山。


「揃ったな。よし、ではこれより実習内容を発表する」


内容は至って簡単。腰に白い布を巻き付け、それを奪うだけ。二人一組としより多く布を奪ったペアが勝ち。奪われた者は罰として学年から裏々山までの五往復マラソン。俄然皆やる気である。


「ちなみにここら周域には椎蓮に罠を仕掛けて貰った。それに掛かった者、身動きが取れなくなった者も罰の対象になるからな」


途端に生徒からブーイングが沸いた。わたしの罠は容赦ない。確かに危険な物は幾つか用意してあるけど四年生ならば避けられるようなレベルのものだ。


「わたしも授業に参加するからね。わたしの布を奪ったペアは食堂のタダ券一週間分がもれなく貰えるよー」
「では開始する。散っ」


その合図の途端に生徒達はその場から消えた。反論も許さない先生に苦笑したけど、事前に作戦を練る時間はあったからか、皆順調のようだ。これは楽しみ。


「嬉しそうだな」
「ええ、それはもう。罠に掛かってくれたらさらに」
「……洒落にならんな」


先生は苦笑するが、遠くから叫び声が聞こえたからわたしは楽しくてへらりと笑った。



*************



たん、と木の枝に着地して下を見ると、見事に罠に嵌まった四年生が嘆いていた。ペアで網に捕られたようだ。


「どんまい、お二人さん」
「椎蓮さぁん」
「出してくださぁい」
「だめだめ。自力で頑張りなさーい。ちなみにその縄はただの縄じゃないから、簡単には切れないからね」


わたしのチャクラが練り込んであるから、ちょっとやそっとじゃ切れない。卑怯かもしれないけどこれも成長するための試練だ、悪く思うな。

更に木を飛んで移動していると、後ろからの気配に素早く進路を変更して飛び退いた。わたしがいた場所には手裏剣が数本刺さっている。気配を探ると、木の上に二人、地上に二人の気配があった。どうやらわたしを狙うために手を組んだらしい。


「(いいね、いい心意気だ)」


先に動いたのは木の上にいた影だった。何かがこちらに放られ、それを避ける。しかしそれは木に刺さる前に軌道を変えて再びわたし目掛けて飛んできた。軽く身体を傾けてそれを躱し、その反動で縄標を木の枝に括り付け体重をかけた。わたしが着地しようとした枝は爆音と共に二つに折れた。安定した場所に降り立つと後ろから飛び出す影。髪を掠める寸まで引き寄せ避け、そいつの足を引っ掛けた。


「うわっ」


そいつはそのまま転んでその場にあった落とし穴に落ちた。随分と大きな穴だ。


「残念だったね、君達」


声をかけると、あーあ、とつまらなそうな声が木の陰から聞こえた。頭上から二つの影も姿を現す。


「どれも当たらなかった…」
「いい策だと思ったのに」
「うーん、やっぱりばれてた」
「あたたた…」
「でも筋はよかったよ。滝、三木、喜八郎、タカ丸」


タカ丸を喜八郎作の蛸壷から引っ張り上げると、悔しがっている彼らに笑顔を向けた。去年は闇雲に突っ込んで来るだけだったから随分と成長したらしい。


「でも椎蓮さん本気出してませんよね」
「ん?」


おや喜八郎、随分鋭くなったじゃないか。返事の代わりにへらへらと笑ってみせると彼らはぶすっとしてしまった。いやいやわたしも現役だからね。


「さて、わたしは行くよ」


足の裏にチャクラを集中させ木の幹を駆け登り、枝に逆さになって立った。彼らは目を見開き、タカ丸に至っては口をぱくぱくさせている。面白い。


「そういえば、布は盗った物を付けていてもいいらしいよー。時間は日没までだからね」
「え…?…あ!」
「頑張りなー」


彼らの見えない所まで行くと、わたしは人知れずへらりと笑いながら四つの布を腰に巻き付けた。



*********



「本日の授業はここまで!今腰に布が着いていない者、日没までに布を奪えなかった者は学園とここまでを五往復するように!勿論罠から抜け出せなかった者も対象だ!」


周りを見渡すと、疲労しながらも安堵している者とすっかり絶望している者の二つに別れた。半分以上は罰ゲームの餌食らしい。


「どうだった、滝?」
「私と喜八郎は大丈夫でしたよ!私が罰ゲームなどあってはなりませんからね!」
「うんうん。三木は?」
「私は…タカ丸さんと…」
「マラソンしまーす」
「タカ丸さん!呑気に手を挙げないでください!元はと言えばタカ丸さんが罠に嵌まったのが悪いんですからね!」
「えへへー」
「褒めてない!!」


タカ丸…恐ろしい子…。とりあえず最後尾に着いて走っていると、滝と喜八郎も横に並んで走っている。


「滝?」
「罰ゲームも授業の一環ですからね!最後まで手は抜きません!」
「ついででーす」
「あら」


本当は三木に負けるのが悔しいくせに。可愛いなあ。二人で競い始めた彼らを見て、若いのはいいと実感した一日だった。わたしも歳かなあ。

110201
ぶ、文が纏まらない…!!
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