鬼灯 | ナノ



「あらあら?」


授業も終わり、人の通りが少ないお気に入りの木陰でゆっくりしていると、ひんやりとした感触が腕を這い首元に巻き付いた。


「見つかっちゃったわね。ジュンコちゃん、久しぶりね」


美しい彼女はしゅるり、と舌を出した。また散歩?と問うと何も言わずじっとわたしの目を見つめ返してきた。元々動物に好かれやすいのもあり、元生物委員会委員長のわたしは生き物を何よりも大切にした。

「一旦生き物を飼ったら最後まで面倒を見るのが人として当然だ」と説いたのは他でもないわたしであり、どうやらそれは代々受け継がれているらしい(喜ばしいことだ)。


「ジュンコちゃん、孫兵が探してるよ。戻らなくていいの?」


彼女はこちらを一瞥してから目を伏せた。うーん、まあいいか。誰か見つけてくれるでしょ。わたしもそのまま目を閉じて力を抜いた。こうも気持ちがいいと不意に昔を思い出す。

そういえば少し前まで蛇は苦手だった。苦手というよりは寧ろ大嫌いだった。勿論元木の葉三忍のあの人だ。あの人には前世でわたしが小さかった頃(まだ父さんがいた頃)に一度だけ会ったことがある。その時は顔が怖いいい人だと思ったのに、ナルトが中忍試験を受けた時に色々やらかしてくれたらしい。ナルトを傷物にした挙げ句(違うか)サスケくんにまで手を出したと聞いた。まったく、なんてことしやがったんだあのカマ野郎。

その後ひょっこりわたしの前に現れて「仲間にならない?」なんて言ってくるもんだから串刺しにしてやった。分身だったけど。それ以来蛇を見るとどうしても殺意が沸く。いや蛇に罪はないんだけどあいつが人間の身体で蛇みたいなことするとか聞いて気持ち悪いから苛つく。何か思い出したらイライラしてきた。


「……あの蛇野郎…今度会ったらめった斬りにして天日干しにしてやる…」
「!?」


ジュンコちゃんがびくりと震えた。どうやら口に出していたらしい。


「ごめんごめん!ジュンコちゃんの事じゃないのよ?無駄に若作りしてる変質者のことを言ってるの」


慌てて弁解すると、ジュンコちゃんは安心したのか安堵の表情を見せた(何となく)。すると遠くからジュンコー!!と叫ぶ声が聞こえた。どうやら恋人が迎えに来たらしい。


「そろそろ行きましょうか」
「シャー」


彼女がもう一度首に巻き直したのを見てから立ち上がり、半泣きで叫んでいる彼の元に行った。孫兵はこちらに気づくと途端に駆け寄る。


「ジュンコおぉぉ…!!」
「シャー」


ジュンコちゃんはまたわたしの腕を伝って彼の首に巻き付いた。よかったよかった。ここまで蛇を愛してくれる人はいないよ。


「椎蓮さんが見つけてくださったんですか?」
「んー?違うよ、ジュンコちゃんが見つけてくれたの」
「?」
「ねー」
「シャー」


またひなたぼっこしようね、と頭を撫でると、ジュンコちゃんは嬉しそうに一つ鳴いた。きっとその時も無断外出で恋人が必死に探しにくるんだろうけど。

110210
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