ひかげぼっこ | ナノ


▽ 狂イ回ル


面倒。食堂のおばちゃんがいないからって何で私まで料理作んなきゃなんないの?この事務員一人でも別に作れるでしょ。第一私料理なんて学校の調理実習を眺めてたくらいなのに、いきなり包丁持てだなんて!見様見真似だけどとりあえず適当に野菜を切ったりして、肩が凝っちゃう。指も切るし!いっそこのまま包丁で刺してやろうかとも思ったけど、今そんなことしたら真っ先に私がやったってばれちゃう。それだと意味がないから必死に堪えた。途中でカウンターに立って皆の注文を受けたけど、どうして五年生は私と目を合わせてくれないのかしら?あ、そうか、照れてるんだ!やだぁ、私ったら罪な女!私のだぁいすきな久々知兵助くんも照れてるのね、かっわいい!そんな必要ないのになぁ、私は兵助くん一筋なのに!皆は私を守る騎士で兵助くんは王子様!完璧よね、お似合いだし。


やっと食堂から解放されたのに次は洗濯物を運べですって?私はお姫様、天女様なのよ!?何で命令されなきゃいけないの!?でも運ぶだけなら皿洗いよりはまし。だから重かったけど運んだの。何よこの量!何往復もする羽目になったわ。


「……あれ、ピンない」


髪を留めていたヘアピンがないのに気が付いた。たぶん食堂に忘れたんだわ。面倒だけどあの女に使われるのも嫌だから取りに行こうかしら。裏口に近付くと声が聞こえた。一人はあの女で、もう一人は、


「(兵助くん…!)」


でも何であの女と一緒にいるの?何であの女と抱きしめあってるの?そこは私の居場所なのに。何で何で何で何で!?気に食わないあの女!!あ、そっか、あの女は魔女で兵助くんを誑かしてるんだ。だって原作にはいない人間だし何か変な力とか持ってるんだわ。ああ、私の王子様!!私が助けてあげるわ!そしてお姫様と王子様は結ばれて魔女はこの世から消えるの、なんて素晴らしいシナリオなの!!文次郎に殴られたのは清々しかったけど、もっと痛め付けなきゃ!そのためには演技をするのよ。そして魔女の本性を暴くの。ああ楽しい!早速行動しなくちゃ。

101210
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