■ 保健室にて


気がつくと保健室にいた。

『うえ…気持ち悪い』

フラフラと起き上がると吐き気がした。

「血が足りてないから何か食べたほうが良いですよ」

『のわああっ!?』

黒子くんは驚かすのが上手いなと一瞬思った。

「すいません。少し吸い過ぎました…」

ベットに腰掛けている彼が申し訳ないと謝る。

『………あー、うん。私こそゴメン』

「それと、貴女のおかげでボクのムキムキ度が上がりました」

『…ごめん、何の話?』

黒子くんが真面目な顔で不思議なことを言うものだから、名前は思わず首を傾げた。

「…貴女を保健室まで運んだのはボクです。黄瀬くんはボクより大きいですから、」

『平均身長の黒子くんが馬鹿デカイ涼太を運ぶように見せかけた…』

「そーゆーことです。女性は軽いですからね」

何気に私を利用してムキムキレッテルに喜ぶ黒子くんへ、どう対応していいか分からない。

『というか、今何時?』

黒子くんがポケットから白い携帯を出してカパッっと開けた。
ガラケー仲間がまだいたとは。

「お昼過ぎですね。正確には12時14分」

『うん。じゃあ帰る』

「帰るんですか」

『だって散々だったし』

彼はそうですか、とクスクス笑った。

「そういえば何故、黄瀬くんの変わりに学校に来ているんですか?」

『…涼太が熱出したの。でも赤司ってやつが怖いからって聞かなくて』

黒子くんが目を逸らし、頷いた。

「赤司くん…、確かに怖いです。鋏でいつかは人を殺しそうですし」

『何それ、怖い』

「黄瀬くんが貴女に泣きつくのも無理はありませんね」

地獄に堕ちたような顔で言うものだから黒子くんは何を見たのか、はたまた殺されそうになったのかは不明である。


『………赤司ってやつには会いたくないな』

「ボクは部活で毎日会いますけどね」

『え、マジ?』

黒子くんが勇者に見える。私ならそんな怖い人と部活なんてやっていられない。

「…でも、優しいときもあります。ただ厨二病なのが残念ですが」

『厨二病なの!?』

赤司さまが、ますます謎だ。
恐すぎて"さま"を付けなきゃ脳天に鋏を刺されそうな気がする。


「そうだ、ボクは黒子テツヤです」

思い出したように黒子くんが言う。

『知ってる。美形だけど影の薄すぎて残念ながらモテない黒子っち☆、って涼太が言ってた』

「………………。黄瀬くんに殺意が湧きました」

黒子くんがネチネチ文句を言う。

『涼太ってせっかく良いこと言っても、余計に一言多いよねー』

「ですよね。美形ではないですが影が薄いのはボクの長所であり短所です」

『そうなんだ。というか美形だと思う』

よく分からないが勝手に話を終わらせた。

「あの、名前を伺っても良いですか?」

『黄瀬名前。馬鹿涼太がお世話になっています』

「あ、はい」

黒子くんは丁寧にお辞儀をする。

「えと…、一応ボクは吸血鬼なんですけど…、何というか」

『…………うん、わかった。だから血はもう吸わないでね』

「え…」

明らかにショックという表情をしないでほしい。

『吸血鬼なのは分かった。けど血は吸うな。以上!!』
さっと立ち上がると黒子くんが足元に飛びついて来る。

「ちょ、ちょっ!!ちょっと待ってください!!吸血鬼が異性の血を飲むのは、その異性のことを好いているってことで………あ、」

言ってしまったと顔を引き攣らせて顔を赤くした。

『ほぉ…、熱烈な告白どうも。でも私、いろいろあるし年下はちょっと。それに明日は涼太が学校来ると思うから、』


もう会えないの、と言った。すると黒子くんは無言で離れた。
私はうなだれる黒子くんに別れを告げて早退をした。

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