■ ダメ人間
「テストはマジ駄目なんス!!一生のお願いっス」
中学三年生のませた弟。黄瀬涼太。現在モデルでバスケが大好き。そして馬鹿。
『いや…。自分で何とかしろ』
対照的に大学受験に失敗した私。黄瀬名前。
現在は職にも就こうともせず放浪人生三日目である。
正しくは三日前に大学受験に失敗したのだ。東大を受けたが落ち、ショックで就職の願書すら出していない。
「お願いっス!!熱出してテスト休むとか赤司っちに言い訳できないっス!!」
『……うるさい…』
容姿はそこまで変わらない。むしろ髪が少し伸びて女らしい体つきかの違いだ。身長は何故か名前は平均的。
「お願いっス!!」
私の布団を剥ぎ取り泣きついて来るものだから、思わず弟の頭をスパンッと叩いた。
『うるさいって言ってるでしょ!?だいたい何時だと思っているの!?』
「朝の5時っス…」
『…しね。馬鹿弟…』
「姉ちゃあああぁぁああん!!!!」
熱に浮された顔で泣くものだから、仕方なく起き上がる。
『うるさいっ!!馬鹿ッ!!話は聞いてやるから少し黙れ』
弟の涙が止まり手を握って来る。
「ちょっと待っててほしいっス!!」
話を聞くと言った矢先、何なんだコイツは。
呆れて声もでない。
『はぁ…。こちとら傷心で沈んでるのに』
バタバタと戻ってきた弟は懐かしい帝光中の制服を握っている。近所迷惑よりも脳裏を過ぎったのは嫌な予感と、その内容。
「テストで赤点とったら赤司っちに殺されるんスよ〜。話はこれだけっス!!」
いろいろ聞き捨てならない。
『ま、まさか…』
「俺の代わりにテストを受けてほしいんス!!」
この馬鹿弟は、本物の馬鹿だろう。
『ふざけんじゃねぇ!!何がオレノカワリニテストヲウケテキテホシイッス!!だ!!バッキャロー!!!!』
「お、怒らないでほしいっス!!」
『フツー、怒るわ!!ボケっ』
「姉弟の好でお願いしまっス!!」
土下座までする弟。どんだけ赤司ってやつが怖いのか。
知りたくもないが、とにかく大人しく追試受けろとしか思えない。
『テメェ…、もし私が涼太の制服を着たとしても身長はどうすんだ?あ"!?』
「それは大丈夫っス!厚底あるんっスから。姉ちゃん、厚底はきなれてるでしょ?」
それでも身長差は誤差がでる。どうしても名前が小さいのだ。
『…しね』
結局私は可愛くない弟の説得の下、制服に腕を通して涼太が朝練に行ったように見せかけて帝光中へ向かったのだった。
一方の弟は私の部屋で私のフリをしながら休養している。
[ prev /
next ]