■ 何故バレた!?

何故バレた!?
「嘘はいけませんよ?」

唖然とした。黒子くんの手が私の靴を脱がす。

『黒子っち…、』

「………………」

『て、てっぺんハゲは長髪に憧れるんスよ〜…。それに俺、た、たたた短足なんス…』

「黄瀬くんの妹さんですか?」

黒子くんの言葉がザクッと突き刺さる。

『違うっ!私は姉だ!!馬鹿っ』

自分で言いながら後悔する。罪のない黒子くんを罵倒してしまった。黒子くんが驚いたようにこちらを見ていた。

「お姉さん?…ちっさ」

『!?』

私は"小さい"という単語に心に穴が空きそうになる。

「よく見たらブレザーもブカブカじゃないですか。靴は…なんですか?コレ。靴底が物凄く高いんですが…」

『もう止めて…。チビなのは自覚してるから……』

「そうですか。それよりこの靴は何ですか?」

ズボンから靴を引き抜く。すると私の足がすねの半分より下辺りで途切れているのを見て彼は更に驚いた顔をした。

『厚底の靴…、』

力無く言うと彼は楽しそうな表情をした。

「足短いですね」

物珍しそうに私を見る。さっきから結構失礼なことを言ってくれるよなぁ。この子。

『短足…、私そこまで胴長じゃない』

「そうですか。まぁブレザー自体が大きいですもんね」

『というか何で私が涼太じゃないって分かったの?』
私は彼に聞いた。すると彼は目をつむって私の髪を少し掬い、鼻を近づけた。

「匂いです」

『私臭かったのか…』

黒子くんの手から髪が滑り落ちた。

「違います。知っていますか?男性の吸血鬼は女性の血しか飲まないんですよ」

『知らんな。つまり黒子くんは自分が吸血鬼ということを前提で言ってるんでしょ?鼻が良いんでしょ。遠回しに』

黒子くんは私から離れると厚底をその辺に放った。

「前提というより事実です。ボク、冗談苦手なんで」

『あ、鼻が良いんだ。犬みたいだね』

「いや、そうではなくて吸血鬼の話ですよ」

『へぇ〜、ふざけんな』

笑顔で私は言い放った。
彼は全く動じない。むしろどうでもよさそうだ。

「試してみます?」

『はぁ…、馬鹿みたい。というか、私が涼太の変装してたこと黙っててくれない?』

「別に黙っているのは構いません」

私は礼を言って逃げる準備を始めた。ウィッグネットを広げ、ウィッグの毛先も整える。

『…ちなみにあんまり年上の人をからかうのもどうかと思うよ?』

「からかってるかは試してみないと分かりませんよ。ほら、吸血鬼なら血を吸いますからね…」

黒子が迫り、私は気にも止めずにウィッグを整えている。

『………』

「…どうなっても知りませんからね」

彼は私の首元に顔を埋めると、ガブッと噛んだ。
私はウィッグとウィッグネットを落とした。

『い"!?』

どれだけ強く噛んでいるのかと思えば、何かを吸い出される感覚。

『ちょっ…!?くろっ、こくん!』

いきなり視界が霞み、体の力が抜けた。
何だか貧血の時のようだ。そして私は意識を飛ばした。



「…ごちそうさまでした。ってあれ?黄瀬くんのお姉さん?」

黒子がぐったりした名前を揺する。

「……ちょっと吸い過ぎましたかね?」

200tなら確か貧血手前だったはずだが。
とにかく貧血にさせてしまったのは確かだ。



4時間目のチャイムが鳴った。

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