■ 捕まえにきました


翌日、部活のあと黒子が黄瀬を殴って家に乱入した。

「黄瀬くん、邪魔しないでください。ボクの子を名前さんに孕ませるんですから」

「ヤメテェエェっス!!なに姉ちゃんを襲う予定たててんスか!?」

二階の廊下で足に纏わり付く黄瀬を蹴り、黒子は微笑む。

「うるさいです」

ドカッと顔面を蹴られ黄瀬は悶えた。

「モデルの顔オォ!!」

黄瀬がギャアギャアと転げ回り、トドメに黒子に踵落としをされ息絶えた。
そこで名前の部屋のドアが開く。

『馬鹿涼太!!うるさいっ!!何暴れてん…、………………なんで黒子くんがいるの…』

「あ、名前さん。ボクの子供を孕ませにきました」

黒子のスマイルが何故か怖くて名前はドアを閉めようと引っ込む。

『お、お断る』

「日本語大丈夫ですかぁ?」

ガッっと無理矢理ドアを開くと名前が冗談だろ、と言いながら後ずさった。
黒子がドアを閉めて鍵をかけるとバックから紙を取り出した。

『……黒子くん、まだ中学生なんだからさぁ…。そーゆーのは大切にしよう?』

「黙ってください。大体何ですか。その格好は…、」

ジロリと睨む黒子。確かに名前のだらし無い格好は呆れる。
タオル地の短パンに、キャミソール。ブラの紐が肩から垂れている。

『部屋着だから良いんだよ!!つか来るって連絡来てたなら、ちゃんと着替えたつぅの!!』

黒子にドンッ突き飛ばされ、名前は後ろにあった椅子に座る形になる。

「来るって連絡なんかいれたら名前さんは逃げるでしょう?というか誘ってるんですか?…あ、着痩せするんですね」

下ネタも混じりつつ黒子がマシンガントークする。

『ペチャパイで悪かったな』

「そういう意味ではないです。むしろ大きいと言っているんです。あ、でも桃井さんのほうが巨乳です」

『ヤメロ』

いつもの調子で名前が突っ込む。

「まぁ、食べやすいので許します」

首をペロリと舐めて容赦無く噛み付いた。いつもと違い、とんとん拍子の黒子を怒鳴る。因みに血を吸われることに慣れてしまった。

『いったぁ!?ふざけんな!おい!コラ聞いてんのか!?』

黒子の髪の毛を思い切り引っ張る。血を吸っている黒子の鳩尾を殴ったりしているうちに息がきれてきて、結局グテンとうなだれた。

「あんまり動いてウザかったので多めに頂きました」

キリッと言った黒子を睨む。

『テメェ…』

「上目遣い良いですね」

『しねよ』

「本当に死にそうです。ボクが血を吸うのは好意を寄せているからですから」

『前にも聞いたわボケ』

口だけ達者である名前に黒子はため息をついた。

「いいですか?あなたはボクの子を孕むんですから、」

『その孕むって言い方やめてくんない?』

「孕むは孕むでしょう」

キョトンと言う黒子に今度は名前がため息をつく。

『もういいよ…。つか孕まないし』

「んー…、でも血は何度も吸ってますし、キスだってしましたから、孕めるハズ」

黒子の言葉が支離滅裂過ぎて名前はハァ?と馬鹿にした目で見た。

『黒子くんさぁ、キスで子供ができちゃうなんて無いよ?普通』

「ボクはそこら辺の人間と違うことを忘れないでください」

『あぁ、ヘンタイ度数とか?』

「違います」

キッパリと言った黒子に名前は下品に笑った。

『じゃあ何が違うのさ!』

「ボクは吸血鬼ですよ?人間じゃない」

耳元で囁いた黒子が笑った。

『まさかとは思うけど…』

「吸血鬼はキスで子供をつくれます」

『ふざけんなあああぁぁあああ!!昨日二回もキスしたぞ!?馬鹿野郎!!』

黒子が名前の前に屈むと紙を一枚取り出した。

「ですが吸血鬼の子供は成長が人間より遅く、胎児の期間がとても長いです。なので、その間に就職しましょう。因みに人の約二倍の期間ですから凄く長いですよ」

紙はある塾の願書。明朝体の文字は学力に自信があるあなたは是非!!と書かれている。

『は…?』

「ボクが18歳になるまで待っていて下さい。絶対に大切にしますから」

ぎゅむっと抱きしめられ、名前は目を見開いて顔を赤くさせた。

『………う、…仕方ないな』

黒子の腕の中でもじもじと言った名前。

「ありがとうございます。……まぁ、ちゃんと孕めるかは分かりませんが」

『確証あって話を進めたんじゃねぇのか!?』

「本当に孕んだかなんて分かりませんよ?」

『テメェ…』

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