■ すべてから逃げる
翌日、目の下に隈を作ってしまった名前は例の本を鞄に入れて部活に行った。
チームメイトにどうしたのかと聞かれたが黒子がどこかで聞いているのではないかと不安になり、ただ眠れなかったと言った。
幼なじみのあんな顔は見たことはない。
勝てばいい話なのだが、刃物まで突き付けられてしまっては、勝てる自信はない。
防犯ブザーは持っているが安全とは言いがたい。
とぼとぼと歩いていると悲鳴が聞こえた。
何だと振り向くと青峰かこちらに突っ込んで来る。
「名前!!あぶねぇ!!!!」
ドカッと体当たりされ青峰ごと吹っ飛ぶ。ガシャーンと大きな音とが響き、ガラスが割れる音がする。青峰が起き上がり、下敷きになっていた名前も起き上がる。
『……あ』
「おい!怪我ないか!?」
『う、うん』
先程自分が立っていた場所に体育館の照明が落ちていた。
粉々に砕け散った破片が散らばり、思わず天井を見上げる。
照明を付け替えるための鉄筋の上に黒子が立っていた。本気で殺しにきている。
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