■ 見ぃつけた


ガチャとドアを開ける音が聞こえた。

「かくれんぼですか…?でもボク、名前の居場所知ってますよ?」

クローゼットの隙間から覗くと黒子と目が合う。名前は思わず息を呑む。

「ずっと監視してましたから。このゲームはボクの勝ちですね、メリィさんはボク。ボクのラブレターを読んでくれたんですよね?」

お願いを聞いてくれたのだから、と黒子は笑う。ゆっくり近づいて来る黒子から逃れようと名前は身を更に縮こませる。

「返事を聞かせてください」

Diaryは黒子のラブレターだったのかと名前は思考を巡らせる。

「返事を…」

クローゼットが軋み、ガラガラと開け放たれる。
クローゼットで体育座りをする名前に合わせて黒子もしゃがむ。

「聞かせて………?」

小さな子供のように首を傾げる黒子が恐ろしい。

『い、いや…、テツはす、好きだけど、それは、…友達とか幼なじみとしてで…』

にじり寄る黒子が握っているのがペティナイフだと知ると更に恐怖は倍増する。

「ボクは名前を愛してるのに?名前はボクを愛してはくれないんですか?」

黒子の手がギリギリと音をたててペティナイフを握り締めた。

『…だって、テツは…幼なじみでしょ』

「いらない」

『え…』

「こんなボクも名前もいらない。死にましょう」

愛してくれないなら存在する意味はない、と黒子が笑った。

『意味わかんないよ!やめてよ!!』

ガタガタと震えながら名前は黒子を見上げた。

黒子の表情が豹変し、ペティナイフを振り上げた。

「…うるさい」

声を漏らす間もなくペティナイフは名前の首元に刺さった。目の前が真っ暗になり、血が噴き出す感覚を最後に名前は黒子の胸元へ飛び込むように倒れた。


「……大好きですよ。次は相思相愛だと良いですね」

ちゅっと名前に口づけた。



***




無機質なテレビのアナウンサーが速報と言った。


本日、東京都内の住宅地で中学生二人が死んでいるのか見つかりました。
警察は自殺として捜査を進めており、少年は脇腹を何カ所か刺され、少女は首元にナイフを刺した形跡があり、少年の手には刺したときのナイフの鬱血跡があることから――――…


二人は抱き合う形で発見され、部屋からは少年の日記が――、少年は少女に対し―――――、


また、二人の通う中学校では体育館の照明が落ちるという事故が同日にあり、事件との関連性かないか―――――…








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