■ アルビノ
白で統一された部屋は、本棚とデスク、ベッドだけが置かれていた。
ここは名前の部屋。真っ白な髪と、真っ白な肌によく馴染む。
名前は確かに日本人だが、その容姿は掛け離れている。
いわゆるアルビノと呼ばれる病気だ。
そんな名前はここで一人、毎日過ごしていた。
出来る限りの無菌に近づけるために、除菌スプレーは常備してある。
アルビノは寿命が短く、身体が弱い。
この真っ白な部屋は名前が少しでも長生きをするための部屋。
名前にとってこの部屋が友達なのだ。
親に捨てられた彼女の憩いの場所。そして唯一、彼女が愛される場所。
今日も彼はやってくる。
「ただいま、名前」
優しいテノールが耳から侵食してくる。まるで立体音響のように。
『お帰りなさい、テツヤさん』
彼に手を伸ばせば、応えるように握ってくれる。
彼の名は、黒子テツヤ。
黒子は握った手を自らの頬に当てる。
「・・・・・・・・」
名前は目をつむって、黒子にゆったりと抱き着いた。
誰に何と言われようが、監禁だと言われても、名前は抵抗はしない。
それはたった一つの世界に真っ白な部屋と黒子しかいないから。
だから今日も呟く。
『愛してる』
返事は決してこないと解っていても。
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