■ ???
一見すれば普通のシンプルな部屋。
それは見慣れた幼なじみの自室。名前はその部屋で一人、座り込んでいた。
軟禁癖のある幼なじみは一応、名前の彼氏だ。
部屋のドアの鍵が回る音がし、水色の髪が見えた。
「名前、起きてたんですね」
『テツ…』
丁寧な言葉遣いの幼なじみ、黒子テツヤは部屋に入るとドアに鍵を掛けた。
「よく眠れましたか?」
『帰りたい』
噛み合わない会話を幾度か繰り返す。
しかし黒子の手が握っているものを見てしまい、名前は無意識に部屋の隅へ後ずさった。
チラチラと見えるものは調理に使う包丁だった。
『…テツ、それは』
名前は身を抱くように縮こまる。
黒子は包丁を持ち上げて、これですか?と名前を見ながら笑った。
「名前をちょっと虐めてみようかと思って」
『は…、いじめ…?』
はいと答えた黒子が無表情に変わる。
「家に帰るための足なんて必要無いでしょう?」
『なに言って…』
「もっと泣いていたほうが可愛いですから」
黒子は包丁を片手に、名前の右足を掴み深々と足首の腱を切った。
『いたいッ!いたい!やめてッ』
「明日は左足も切りましょうね」
カタンと、包丁を床に置いて止血を始めた。
『やだ!帰りたいだなんて言わないから!!切らないで!!』
名前の悲鳴は黒子には届かない。
[
prev /
next ]