■ ツンデレのデレデレ


『何で…、』

「え?」

ぐずぐず泣きはじめる彼女。黒子はそんな彼女にオロオロするしかなかった。

『テツヤのばかああぁぁああ』

ついに大声で泣いてしまった。時々読めなくなる名前の心。黒子に名前を泣かせるような心当たりは全くない。

「あ、あの…」

誰もいない廊下とはいえ居心地が悪い。

『ばかああぁぁああ!!』

「名前さん…。ごめんなさい、何故貴女が泣いているのか分かりません…」

よしよし、と頭を撫でて抱きしめるが泣き止まない。まるで大きな子供をあやしているようだ。

『……ふっ、ゲホッ』

名前が泣きすぎて噎せかえる。ゆっくり背中をさする黒子に身を任せた名前が嗚咽混じりに言葉を紡いだ。

『テツヤが…、テツ、ヤがぁ』

顔面が涙で濡れ、眉を寄せ、可愛らしい顔はぐちゃぐちゃである。

「ボクが…?」

ハンカチを取り出して涙を拭う。

『う、うわっ、うわき…、浮気する、からぁ…』


そこまで言うと名前はまた泣き出す。

「黒子っちが浮気っスか!?」

不愉快な声に黒子は顔を上げた。すると黄瀬の頭が誰かに引っ張られて引っ込む瞬間が見えた。

「馬鹿っ!!何やってんだよ」

「あの二人の玉砕するか愛の一歩を歩むかを邪魔してはいけないのだよ!!!!」

「みどちん声大きい」

黒子は名前を抱きしめながらフツフツとドス黒い感情が渦巻く。

「(あの人たちはっ………)」

『浮気したから無反応なんでしょっ!!ばかばかばか!!テツヤなんか大嫌い!!私はテツヤが大好きなのにっ!!』

がむしゃらに暴れだす名前に鳩尾へパンチをお見舞いされた。

「うぐっ」

「ぎゃあああっ!!黒子っちが死んじゃうううぅっ」

『離せっ!!テツヤなんか大好きだけど大嫌いだ!!』

向こうでベチンと何かを叩く音がしてシンッとした。

「…………あの、」

何気にデレているのは自惚れても良いのか迷い所だ。

『…………ばかぁ、別れるなんて…ゆるさない、一生呪う……』

「あの、…ボク浮気なんてしてません」

ぎゅうっと名前を抱きしめると同時に壁の影に隠れている仲間を睨む。

『うそだっ、私知ってる!!桃井さんっていう爆乳の女の子と浮気してるもん』

「(爆乳…)」

黒子の思考が一瞬停止した。壁の影に隠れている仲間も何人か噴き出す。

『ほら、黙るってことはそうなんでしょっ!?』

ドンッと黒子を突き飛ばした名前はまた泣きそうだ。泣いたり泣き止んだり忙しい人だ。

「ち、違います!!桃井さんは友達です」

『うそっ!!抱き合ってたじゃない!』

「あれはスキンシップ…」
『ばかああぁぁああ!!』

スキンシップの言葉に名前はしゃがみ込む。

「黒子が不憫なのだよ…」

「(緑間くん、聞こえてます)」

『さいてー!!』

黒子の怒りのボルテージがMAXへ上昇していく。
ぎりぎりと拳を握りしめた。

そして衝動に駆られ、側の壁を思い切り殴った。

「名前さんはボクがそんな人だと思いますか…」

名前の驚きと恐怖の表情を織り交ぜた顔が黒子をとらえる。

『…………』

「ボクが好きでもない人にキスしたり、抱きしめたりしますか?」

『………ふぇ』

嗚咽が漏れた彼女に合わせ黒子もしゃがみ込む。

「そういう風に思ってくれたのは嬉しいです。…でも誤解されるのは嫌です」

『…………』

優しく名前を包み込み、その場に静寂が訪れた。

「(そういう勘違いも可愛いから好きなんですよね)」

だから離せない。







さて、誤解が解けたところでアイツ等を殺しに行こうか。

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