■ ツンデレの本心


名前さんはよくボクのことを嫌いだと言う。
事あるごとに、構ってもらえないとき、不機嫌なとき、二人きりじゃないとき。

いろいろな場面で言う。でも顔を赤くして泣きそうな名前さんは後々後悔をしてゴメンねと言うのが普通だ。

ほら、今だってそうだ。一途な名前さんは口を尖らせて知らないフリをしている。

『わ、私、知らないもん!!』

「じゃあ、誰なんですか」
『違うもん!!』

「何がですか?」

昼休み、知らない男子と歩いていた名前さんをさらっていきなり問いただしてみた。すると、これだ。

『あの人はテツヤとは違うの!えと…、』

天然キャラの扱いはお手の物。ツンデレの扱いはお手の物。ボクに名前さんの世話焼と言う前に彼氏だということを忘れないでいただきたい。

「……」

『〜〜〜っ!テツヤなんか嫌い!!あの人のほうが優しいもん!!』

ほら、でた。ボクが嫌い発言。

「ありがとうございます」

いつも通りの会話。黄瀬くんは倦怠期?と聞くがそうではない。

『ばかっ!なんでぇ!!』

ついに泣き出した名前さんは涙を制服の袖でゴシゴシと拭う。

「すみません。遊びすぎました」

『うるさい!テツヤなんか嫌いっ』

男子は委員会の後輩ってことも知ってます。だって、彼女は保健委員会の委員長ですよ?

え?


確信犯ですが、何か問題でも?

「あまり良い気分では無いんですよ?彼女が知らない男子と歩いているのを見るのは」

よしよし、と頭を撫でてハンカチを出した。
名前さんは涙を拭うのを止め、ボクのハンカチを握り締めた。

『ばか…。嫌いだもん』

「……もう」

抱きしめれば、ちゃんと抱き着いてくる。手を握ればくっついてくる。髪を撫でればボクの手を愛おしそうに見る。行動と言動が矛盾しているのが名前さん。




「好きの間違いでしょう?」




何故、反対語しか言わないのか不思議だ。

でも素直じゃない名前は反対語を言って愛していると言う。


結果としてツンデレなのです。彼女が嫌いと言えば『好き』という意味。

好きといえば無理して遠回しに『嫌い』という意味。

これが解るのはボクだけ。他の誰にも分からない彼女の言語はボクだけが翻訳できる。

だから、嫌いと言われたら、ボクの精一杯の『ありがとう』を言うのだ。








*おまけ*


『今日のテツヤ、腹黒い』

「否定はしません」



何故、こういう時は素直なんですか。痛いところはズケズケ言うくせに。

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