■ ツンデレとの出会い。


昨日の黒子浮気疑惑という誤解のあと、黒子は生徒手帳に挟まれた写真を見て一人で微笑んだ。

その写真は名前と付き合いはじめた、その日に撮った写真だった。












***












桜前線が過ぎ去った頃、ボクは入学式で彼女と出会った。
お互い新入生同士で、校舎で迷ってしまったのだ。
二人で何とかたどり着いた体育館。
クラスを教え合って離れた。

入学式や部活動見学が終わり、放課後に彼女のクラスに行ってみた。教室の隅の席で友達に囲まれて嬉しそうに話をする彼女を見て何故か心が痛んだ。

その時の感情に任すように彼女へ近づいた。


いわゆる一目惚れだ。

「名前さん」

彼女を囲む友達はボクに驚き、奇声を上げ、のけ反る。

『あ、テツヤくん』

この時ボクは彼女が天下一のツンデレだとは知りもしない。

「一緒に、途中までで良いんで帰りませんか?」

周りの目が好奇心に変わり、温度が上昇した。

『……まぁ、テツヤくんの為じゃないけど良いよ。言っておくけど私のためだからね』

おそらく初めて聞いた彼女のツン発言。

「ありがとうございます」







桜の木の下を歩く。
そんな二人に会話はあまりなかった。

しかし、しばらくして口火を切ったのは名前。

『て、テツヤくん。一緒に写真撮らない?』

「え?」

『せっかくだから…、その………』

顔を真っ赤にして言う彼女。

「いいですよ。ただしボクと付き合ってくれたら」

自然と出た言葉。自分で言って少し恥ずかしかった。

『テツヤくん、……わたし』

それは桜がもう散った後の話だった。

「一目惚れしちゃいました。……その、」

『わ、私もテツヤくんに、一目惚れ…してて…、』


そして笑いあった。

「じゃあ、答えは分かりきってますよね」

いつの間にか彼女が握っていたカメラを、ボクは取り上げて桜の花びらが地面に広がる様子を背景に選んだ。

そして抱き寄せた彼女の肩。きっと馴れ馴れしいくらいがちょうど良い。

恥ずかしげな彼女の顔が笑顔を作った。

ボクは天に向かって腕を伸ばし、シャッターボタンの確認をする。

「撮りますよ?」

『うん。良いよ』



パシャッっと音がして写真の中で笑うボクと彼女。











***













『テーツーヤ!!何見てるの?』

背中に重みを感じて顔を上げた。

「名前さん…、」

愛しくて堪らない彼女。小さいことを溜め込みすぎて訳の分からない発言もするし、デレデレの時もツンツンの時も、全てが好きだった。
それは今も変わらない。現在進行形で愛している。

『懐かしい写真だね〜、私も生徒手帳の中に入れてあるんだ。一回、先生の荷物チェックで見つかったときは恥ずかしかったよー』


写真は校則違反じゃないから良いんだけどね、と照れた顔で彼女は言った。

「名前さんは覚えてますか?初めて会ったときのこと」

『うん。あの話は傑作だから私たちの子供に聞かせてあげたい』

もう結婚は前提らしい。


「……好きです」






そんな彼女が大好きです。



『ふんっ!!私だって好きだけど…、う…、えと、まぁ嫌いなとこもあるかな!!付き合ってるのだって、テツヤが勝手にで…その、…………私のためなんだからね!!勘違いしないでよ』







今日も名前さんのツンデレは健在です。

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