▼ プラネット
そのスカイブルーの瞳が満天の星空を眺めていた。
名前はマフラーを巻き直して、ピントを何度も合わせていた。
秋の晴れた夜空は冷たい風が吹いている。黒子は鼻を啜って、空を仰ぐ。
そこで初めて名前は望遠鏡から目を離した。
『黒子くん、見て』
黒子が視線を名前の望遠鏡に移す。傍に寄ると、望遠鏡を覗いた。
そこから見える星は煌々と輝く。
「綺麗ですね」
真っ白なブレザーとは対照的な黒のマフラーを巻いている名前に言えば、優しく微笑みを見せた。
「でしょ?」
どれがどの星かなんて分からないが、ひどく高揚していた。
黒子が名前の手を掴むと、引き寄せる。
「不思議ですね」
名前は手を引かれるままに、黒子の胸へおさまる。
名前がマフラーを緩めて、黒子を入れると語りだした。
「ガガーリンは地球は青かったと言っていた」
黒子の胸元に頬をくっつけて、体温を分け合う。
名前が黒子を抱きしめ、見上げると目があった。水彩のような青をした瞳が想像を掻き立てる。
「水の星ですからね」
「そうじゃない」
教科書に載っている地球を見たとき、ひどく鼓動がうるさかった。
黒子の目のふちを親指でなぞる。
「私は黒子くんより天体が好きなのに…。天体より愛しいと思ったんだ」
同じ色をしている。実際は黒子の瞳の色のほうが淡い。
しかし、見つめるとだんだんと深くなる視線が、名前には堪らなかった。
「じゃあ、ボクは宇宙に勝ったわけですね」
「認めたくないけど、私の宇宙に勝ってる」
黒子が再び鼻を啜った。
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