▼ ませた小学生

 最近、小学生に懐かれた。まだまだ名前だって子供だが、小学生の方が思考も幼い。 しかし、その小学生にからかわれているのは事実である。例えば、帰り道には必ずついて来る。そして、軽やかな敬語で名前を口説くのだ。馬鹿にするにも程が有る。
 そんなませた小学生の名前は黒子テツヤ。見た目は目がまん丸で可愛いのだが、名前を見かけるとすぐこんなようなことを言う。

「あ、こんばんは。名前さん、今日も可愛いですね。ボクは名前さんのことが好き過ぎて今日も頭から離れなくて大変だったんですよ?」

  おかげで算数のテストがさんざんだったと名前のせいにしている。それはどうかと思うが、そこは可愛らしい小学生に便乗して、そうかそうか悪かったと適当に謝った。そうすると彼はぷぅっと頬をふくらませて、全くですと言う。その動作が名前は天使だとか悶えて彼を抱きしめてしまう。
 今日も帰り道に彼と会った。正しくは待ち伏せされていた。

「おかえりなさい。名前さん」

「ガキンチョ、まだ帰って無かったのか」

「ガキンチョじゃないです!」

 黒子が名前の横に並ぶ。プンスカ怒る黒子はさりげなく手を繋ぐと、名前を見上げた。こんなに小さい子がガキンチョでは無いとすればなんなのだろう。
 名前はため息をついた。黒子が手を引くままについて行く。

「どこに行くの?」

「いいところです」

 ルンルンと歩く黒子は名前の知らない道を歩いていく。小学生はいろいろな近道を知っているなぁと呑気に感がいていた。
 小学生のお遊びにつきあうくらい、どうって事は無いが、彼の門限は守らせなくてはならない。それだけは念頭に置いておいた。

「着きました」

 名前が我に返って辺りを見渡した。そこはひっそりとした場所だった。緑に囲まれて温かみの溢れる場所。
 黒子が寂れたベンチに座ると、名前もつられて座った。黒子を見ると優しく微笑んでいる。手を取られ、黒子が自らの頬に当てた。

「この場所、…とても落ち着きませんか?」

 ボクの秘密基地なんです、と言った。なんだか懐かしい気分になった。名前も秘密基地と言って何度も通った場所がある。その時の雰囲気や感情がこんな感じだった。

「そうだね」

 二人の秘密だと彼は囁いた。分かっている。だってここは秘密基地だから。二人の秘密。指切りをした。
 そこで少し沈黙が訪れた。

「……、名前さん、ボクのお嫁さんになってください」

「唐突だね」

 一時逃れのように言った。だが、所詮は子供の恋。それがホンモノが見分けるのも難しい。錯覚と気付けるのはもっと大人になった、だ。名前だって本気で恋などしたことがない。

「なら、誓います。絶対に惚れさせてみせますから」

 ぎしりとベンチが鳴く。名前が黒子を見たとき、彼はベンチの上で仁王立ちしていた。そして両膝をつくと名前の頬にちゅたっとキスをした。
 子供だからとバカにするなという笑みが彼からは溢れていた。

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