■ 好きだよ、だから声をかけたの。
「だから名前さんが欲しい。声をかけるキッカケが欲しくて堪らなかった」
制服のポケットを弄る彼は何かを探しているようだった。
「この気持ちを伝えたくて…、………」
『黒子くん……、落ち着いてよ…』
まだ信じられなくて、名前は黒子の腕を掴んだ。
「貴女はボクのこと好きですか?」
ポケットから手を出した黒子は微笑んで見せた。
その手にはカッター。思わず名前は手を引っ込める。
『く、黒子くん!?』
「ねぇ、好きですか?ボクのこと」
カチカチと刃が出て、自分の指に当てスライドする。黒子の指からは血が溢れた。
『ダメだよ!黒子くん!!指を切ったら…』
名前はとっさにカッターを奪い取り、投げ捨てた。コンクリートを滑っていくカッターを唖然と見ていた黒子。
「…何するんですか」
『何って、別に…、もぅ、ビックリしたよ?いきなり人が変わったみたいになって…』
「カッター…」
『あーぁ。深く切れちゃったね。い、今、絆創膏探すから…』
「…絆創膏?……いりません」
黒子は血の垂れる指を差し出し、いきなり私の唇に当てた。
「…消毒してください」
『………は?』
「舐めとけば良いでしょう?だから、舐めて消毒してください」
『…!?』
グッと無理矢理入ってきた黒子の指。血の味がして気持ちが悪い。
しかしそれも一瞬の事。指を口から引き抜き、今度は黒子が自分の指をパクリとくわえる。
『…!黒子くん、何してるの!?ばい菌が入ったらどうするの!?』
指を出した黒子は名前を見て顔を近づけた。
「間接キスも良いですね」
そう呟いたかと思うと唇と唇が触れ合う。
しばらくして黒子が離れたのと同時に私は口元を手で覆った。
「でも直接の方が良いです」
『黒子くん…、最低』
黒子の手が伸びてきて名前は咄嗟に払いのけた。
そして屋上から逃げ出す。
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