■ ネットワークで出会ったのは


クロさんが入室しました。

パソコンの画面に現れた文字。私は、初めての人だと思い、声をかけた。

#あだ名#:こんばんわ。はじめましてですよね?

enterを押し、回答を待つ。私のチャットルームに人が入ったのは久しぶりだ。なんだか嬉しい。

クロ:こんにちは。はじめまして。

二人しかいないチャットルームに会話が生まれる。

#あだ名#:久しぶりのお客さんだぁ!!ハイテンション、サーセン

クロ:そうなんですか?

#あだ名#:そうなんですよ〜。

クロ:なら来てみて良かったです。

#あだ名#:本当。今日誰も来なかったらチャットルームを消そうかと思ったんですよね〜












***












『ふぁあああ…、ねむ…』

久しぶりのチャットルームでの会話が弾んでついつい深夜まで話し込んでしまった。
友達が片手で数えるくらいしかいない名前にとってネットワークは大事な存在だ。
最近、ネットワークの友達はリアルが忙しいとチャットルームには来てくれない。もう諦めようかと思った時に彼は現れた。

ハンドルネームはクロ。
男の子で実は同い年だった。会話からは文学少年を連想させる。

そしてこの帝光中学にいるらしい。広いネットワークでこんな奇跡がありえるのだろうか?

早速、会ってみようと朝早くに来たのだ。彼は部活で朝はだいぶ早い時間からいるとのことで、私のクラスで待ち合わせすることになっている。

教室の引き戸をガラッと開ければ、しんとしていた。

『お?一番乗り?』

「残念ですが一番乗りはボクですね」

後ろから聞こえた声に振り向く。

『ありゃ…、てかビックリした』

「すみません。ボク、影が薄いので」

水色の髪をした平均的な身長の青年。そして花瓶を持っている。もしかして派手だけど敬語を使う新手の不良だろうか。

『影が薄いって…、影が?貴方、もしかしてクロさん?』

「じゃあ、貴女が#あだ名#さんですか?」

互いにキョトンとした。

『凄い!本当に会えた!!』

「そうですね。案外こんなこともあるんですね」

『えと、本名聞いていい?』

彼から花瓶を奪い、身を乗り出すように聞いた。

「黒子テツヤです」

『あぁ、いつも出席記録があるのに行方不明の子と同姓同名…。………同じクラス?』

「はい。苗字さん、いえ名前さんと呼ばせてもらいます」

失礼な事を言ってしまった。黒子は、よくある話なのでと言って名前から花瓶を奪い教室の窓際に置いた。

『それにしても凄いね』

「はい。名前さんはいつも一人で本を読んでいたので、印象が全く違ったのでビックリしました」

『結構、マシンガントークするよ?友達が全然いないだけだから』

「マシンガントークは昨日、チャットルームで聞きました」

フッと笑った黒子はかっこよかった。

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