ふたりの放課後



 放課後、名前はそわそわとしながら玄関にいた。もう外は真っ暗で、バスケ部の明かりはとうに消えていた。鍵当番だから遅くなるとは言っていたが、少しだけ怖かった。
 暗い学校の玄関で1人なんて、幽霊と遭遇しそうな場面である。

「遅くなり「ぎゃああああああっ!!」

 幽霊云々と想像していた名前は絶叫した。振り返るとテツヤがジャージにマフラーを巻いて立っていた。
 名前がホッと息をつくと、驚かしてすいませんと言われた。

「帰りましょうか」

「う、うん」

 今だに心臓がバクバクと波打っている。靴を履き替えて学校から出た。手を繋いで校門まで行くと、突然手を引かれる。
 顎を引っ付かむように掬われ、唇に柔らかな唇が重なる。
 テツヤの舌が名前の唇を撫でる。吸うとちゅうと音がする。固く口を結んでいると、唇が少しだけ離れた。そしてテツヤの指が無理矢理名前の口をこじ開けた。

「ぅ…、く、ろちゃ…」

 指を噛まないようにあだ名を呼ぶが、聞こえているのか聞こえていないのか、返事は無かった。
 指を引き抜かれ、唇が塞がれる。今度は名前のうなじを手で押さえて、逃げられないように固定しての口づけだった。
 開いた口の中に舌が入ってきて、絡める。歯や上顎、歯茎を舐めとるように撫で、再び舌を絡めては吸う。
 しばらくして離れた。

「すいません、少し貪りすぎましたね」

「う…、こんなのどこで…」

 名前の中で思い浮かんだ純粋なクロちゃんは砕け散る。

「先輩が官能小説を読んで勉強しておけと言われたので、何冊が読みました。名前ちゃんも読みます?成人向けですけど」

「…いいです」

 名前が遠慮すると、テツヤはそう言うと思いました、と笑った。
 手を繋ぎ直して、帰路につく。

「本当は官能小説なんて読んでませんけどね」

「!?」

 名前が思うよりずっと大人になったテツヤは、もうクロちゃんとは別人のようだ。
 それでも、変わらないところがある。
 名前もテツヤも分かっている。お互い中身はあまり変わっていないようだ。

prev next

 

「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -