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誰かの午前
授業と休み時間が交互に来る中、三時間目が終わると名前は必ず早弁をする。全て食べるのではなく、少しだけつまみ食いする程度に。
おかずを咀嚼していると、火神がコンビニのパンをかじり始める。水色の髪の毛の少年はその様子をただ眺めていた。名前はもくもくと食べ続ける。そして授業の開始五分前になると弁当をしまって早弁などしていませんよ、というような表情で先生を待つのだ。
四時間目が始まると、名前は板書の用意を万全にシャープペンを握っていた。ノートは美しく、見やすくまとめるのがモットー。
書道は段。毛筆も硬筆も関係なく美しい字を書く。友達がいない分、完璧を演じ切るのが名前である。
一方水色の髪の毛の少年はしっかり睡眠をとっていた。すぅすぅと規則正しい寝息をたてて、机に突っ伏している。
十二時を過ぎた頃に、午前の授業は終わる。そこで出てくるのは先程の弁当。残りのおかずをゆっくり堪能するのだ。
同時刻、火神も新たなパンを追加してもくもくと食べている。水色の髪の毛の少年は淡々とサンドイッチを食べ続けていた。名前にはいつもと変わらない風景だったが、水色の髪の毛の少年が急に立ち上がると、彼の前方に座っていた火神が驚いてしまう。
名前も一瞬そちらを見たが、また弁当のおかずをもぐもぐと口に突っ込む。
水色の髪の毛の少年は食べかけのサンドイッチを机に残したまま、席を離れていく。そして名前の席の前に立った。
名前は少しだけ戸惑ったが、箸を置いて彼の言葉を待った。
「苗字さん、…お昼を食べ終わったらで良いので、図書室に来てもらえませんか?」
「…なんで?何かあった?」
「あ、えと…、と、図書の先生が呼んでました」
図書委員でもなんでも無い名前に何の用だろう。疑問に思う間も無く、彼は消えていた。
そのことにも名前の思考回路は停止してしまうほどに驚いていた。
名前は図書室にやってくると辺りを見渡し、図書の先生を探した。しかし、そこには誰もいない空間が広がっており、沈黙していた。本棚が並び、中に本が背を向けてただただひしめき合っている。
名前はそれだけで不安になった。本当に呼び出されたのだろうか。
時計は12時を過ぎた。
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