ひとりぼっちの朝



 名前はいつもと同じ時間に家を出る。この習慣が身につくのも、全ては遅刻をしないため。ちょっと早めの時間に出るのが一番なのだ。少なくとも名前にとっては。
 朝練の生徒くらいしか通らない通学路。たまたま毎日、会ってしまう水色の髪の毛の少年。同じ高校なのは知っているが同学年なのか、先輩なのかまでは分からなかった。雰囲気も影も印象も薄い。なんとなく、では読み取れないものがあった。
 だから学年は不明である。その事が気掛かりになりつつ、毎日一人で登校する。
 名前にはだから何だという、その程度のことだった。また、少年もそんな風に思っているに違いない。
 今日もまた、同じ道を辿って行く。







 登校するとまず始めに、花瓶の水を入れ替える。そして換気をしておくのが名前の日課である。
 理由はない。ただ暇だからである。その後に図書室に行って昨日借りた本を返却する。そこで出会うのが水色の髪の毛の少年だ。彼は部活の前なのかジャージ姿で、寝癖だらけの頭をふらふらとさせてカウンターに突っ立っている。
 そして新しい本を借りる。それも一冊だけ。毎日、ゆっくりゆっくりと読むのが楽しみなのだ。休み時間の合間に読のには短編集がちょうど良い。
 自習や暇な教科がある日は長編を読む。パターン化した名前の借りる順序は、見る人が見れば時間割に合わせた順だとすぐにわかるだろう。
 図書室の後は教室に戻って復習をするのだ。宿題で間違えた所を類似問題で潰していく。こうするだけで、テスト前に余裕が出来る。授業中でさえ、意識がブレない名前は頭に内容を無理に詰め込んでも平気だ。
 廊下ではバスケ部が走っている。グラウンドは走るほどの余地もない。何故ならサッカー部と野球部がいるからだ。
 といっても朝の限られた時間で外周するわけにもいかない。そんなインドアスポーツは廊下を使って走ることを許可されていた。
 引き戸の窓越しに、一際大きな、クラスでも有名な火神が廊下を走り抜けて行くのが見えた。その後を遅れてやってきたのは水色の髪の毛の少年。
 名前が復習を終えるまでその廊下での走り込みは忙しなく続く。

 人がざわざわと増え始めた頃、名前は本を読んでSHRが始まるのを静かに待つ。こうして名前の規則正しい生活が始まるのだ。

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