■ 8秒



「その、すいませんでした」

『え?』

 赤司が乗った新幹線が見えなくなるまで見送ったあと黒子が申し訳なさそうに言った。

「ドッキリの話です。押し倒したのはドッキリでは無いので勘違いしないでください」

『……』

「スカートをめくったのは浮気チェックを兼ねたドッキリでして」

『え、浮気チェック?してるように見える?』

 黒子は首を横に振って否定をした。

「いいえ。昨日の花柄パンツの色違いを履いていたところから浮気とは言い難いですね」

『何をどうして浮気チェックに至った?答えろ』

 完全に怒ったままの名前に黒子はしっかり答えた。

「青峰ガングロ大輝くんです」

『青峰くん?へぇー…、今すぐ同好の教室に呼んでよ』

 黒子は真顔で構わないと言った。

『あとさ、湿布貼ってある方はたぶん私のビンタだと思うけど…、もう片方の紅葉は何?』

「カントクに一喝入れてもらいました」

『は…?監督?一喝?』

 黒子と手を繋いで正門をくぐった。





***






「ただいま」

 黒子の一声で教室内の人が振り向く。
 名前はそっぽを向いたまま黒子の二の腕をギリギリと抓る。

「名前さん、痛いです」

『…………………』

 下から睨みあげる名前はホラー映画を見ているみたいだ。青峰は大学内にいたために黒子から事情を聞いた桃井が制裁を下していた。

 顎にひじ鉄をしたり、背中に踵落としをする動作を止めた桃井は名前に駆け寄ると深々と頭を下げる。

「ごめんなさいっ!!私、元カノでもないし今カノでもなくてただの友達なのっ」

『……………』

 メリィ…、と名前の爪が黒子の腕に食い込む。

「いたい!!痛いです!!!!」

『…………』

「桃っち、名前っちに敵視されてないスか?」

「…うん」

 それくらいに名前は全力で黒子に恋をしているんだと青峰が虫の息で呟いた。

「ポエマーですか…」

『…ッチ!!』

 舌打ちをした名前がつかつかと倒れている青峰に近づくとパンプスで思い切り踏み潰した。

「いだああああぁぁぁああああッ!!」

「青峰っち…、自業自得っスよ」

『アンタのせいで…』

 ガッガッと踏み潰す度に青峰が真っ青になっていく。

「それ以上やったら死んじゃいますよ」

『いいよ。死んじゃえ』

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