■ one call love

※暗い

 〔08.03. AM 10:35〕

 携帯の電話が鳴る。名前は携帯を見つめた。
 ディスプレイに映る黒子テツヤの文字が、通話しようか迷わせた。
 着メロが繰り返された。仕方なく通話の文字をタップする。

『…もしもし』

「あ、ボクです」

 少し前までは彼との会話に心を弾ませていたのに、今は違う。
 いつものハスキーボイスと落ち着いた敬語の口調で電話越しに言った。
 
「名前、最近電話に出てくれなくなりましたよね」

『え…』

 事実を言われ、名前はどもる。

「それは故意でやっているんですか?」

 ぎゅっと唇を噛み締めて、平然を装った。

『気のせいじゃない?』

 黒子はしばらく沈黙し、名前の心を焦らす。

「……うそだ」

 ボソリと聞こえた。

『……………』

「何故そんな嘘をつくんですか!?」

 答えろと喚く受話器を握りしめ、ふつふつと苛立ちが沸き上がってきた。
 そして堪える間もなく名前は衝動的に怒鳴り付けた。

『別に私のこと好きじゃないくせに電話してくるのがイヤなのッ!!』

「は?どういうこ『黙れッ!私をからかうのも声を聞き漏らすだけの会話はうんざりなんだよッ!!』

 息を荒げて、名前は携帯を部屋の壁に思い切りたたき付けた。
 割れる画面が暗くなり、電源が落ちる。壊してしまったのかと、慌てて無惨になった携帯を拾いあげた。
 反動で電源が切れただけのようだ。一先ず安心する。
 それでも画面は割れてしまった。

 初めて、恋人と喧嘩をした。でも名前に罪悪感など微塵も無く、溢れる涙を拭いながら、声を殺して泣いた。



 〔08.05. AM 09:50〕

 ディスプレイには三桁の着信履歴が表示されていた。

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