■ 水彩花

 ペタペタとスケッチブックに筆を付ける。
 屋上にて私は良いものを見つけた。
 白い肌に長い睫毛、淡い水色の髪が日に反射しキラキラと光る。
 彼は黒子くんだ。屋上で黒子くんは寝ている。そんなところを私は偶然見つけたのだ。
 時は昼休み。水彩画を描くには十分な時間である。
 というわけで、彼を描くことにした。鉛筆で薄く下描きをしたあと、水彩で淡く塗っていく。
 髪の毛の下地を薄い黄色で仕上げ、上から淡い水色をのせた。

『我ながら上出来』

 しかし何かが物足りない。スケッチブックを眺めて、黒子くんを見つめる。
 あ、色気だ。
 男らしい色気というものが足りない。
 そうと決まれば、水彩セットを入れていたバックからメイクセットを取り出した。
 ヴィジュアル系も悪くないと思う。
 黒子くんの瞼にアイシャドーを三段階に分けてのせてみる。
 薄く青色でグラデーションを描いた瞼は綺麗な睫毛にあう。

『あらやだ、かわいい』

 色気というより可愛さが滲み出てしまった。
 バックには花の髪飾りが付いている。それを外して、黒子くんの髪に、そっと付けた。
 私はこっそり携帯を出すと、カメラモードにする。

『待受に決定だなぁ』

 筆が渇いてしまうのも忘れて、夢中になっていた。

「写メは一枚千円です」

 パッと携帯が手元から無くなる。黒子くんが起きてしまったのだ。

「随分とやってくれましたね」

『ありゃま…』

「ボクが寝ている傍で絵を描きだしたと思えば…、全く…」

 呆れ顔で黒子くんが言う。ホントにごもっともです。はい。
 だいぶ前から起きてたようで、ちょっと恥ずかしくなる。

『千円払うから…』

「そこまでして撮るものじゃないです」

『お願いします。黒子さま。何でも言うこと聞くから』

 土下座をしてみる。黒子くんは少し黙っていたが、携帯を返してくれた。

「じゃあ付き合ってください」

『はい!もちろんです、とも…?』

 私は漠然と黒子くんを見る。

「撮るならツーショットで」

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