■ witness...

地下牢の鍵を使って中に入る。はっきり言うと先程からゾンビを倒しまくり、名前の脳内は混乱していた。

『くっさ…』

地下牢の廊下をゆっくりと歩いている。黒子は先頭で細心の注意を払って進んでいた。

「臭いだけだと良いんですけどね」

臭いだけじゃない場合があるのかと、名前は装備している銃を握り締めた。

『それはつまり、ゾン』

ゾンビと言い切る前にパキッと何かを踏んだ。冷や汗が伝い、足元を見る。

「名前さん?」

先頭の黒子が振り返り名前の視線を伝い、足元を見る。

『あ…ぅ、い、イヤアッ!?』

黒子に飛び付けば、よしよしと頭を撫でられる。

「腐敗が進んでますね」

そんな悠長に言ってまじまじと人の死体を眺めていた黒子の背後はがら空きだ。

黒子の肩越しに感じたキツイ臭いに顔を上げた名前。目の前にはゾンビの顔。

『のわぁっ!?いぎゃあ!!』

黒子の背中に回していた腕を解き、咄嗟に撃ち殺す。地下牢に銃声が響き、黒子がバランスを崩した。

「わっ!?」

黒子だけが尻餅をつき、地面に手をついた。その時、黒子の手がゾンビの手に捕まれた。

『死んでないィ!?いやだ!テツヤ!ソイツから離れて!?』

先程、撃ち殺したはずのゾンビが黒子に襲い掛かる。

「そんなこと出来るならやってます!!」

銃を構えるが弾が一発。外して黒子に当たったらと思ったら引き金を引けなかった。ゲームならHelp!!と表示されたコマンドが出ているところだ。

名前は決心し、ゾンビに向かって走り出す。
怖さで涙が溢れ、鼻水が垂れそうだ。

『うわあああっ!!しねぇっ』

高く飛び、足を目一杯にのばし渾身の飛び蹴りをした。

軽くぶっ飛ぶゾンビを横目に黒子は直ぐさま立ち上がる。

「助かりました」

『(あれ?私、こんなに運動神経良かったっけ?)』

ホラーゲームは本気でプレイすれば怖いなと思ったところで、黒子に手首を捕まれる。最初はゾンビに捕まれたのかと驚いた。

「ナイスですっ!!」

黒子の眩しい笑顔が名前に突き刺さる。

『うん。…そうだね』

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