■ game start...

スピーカーから3D音声で聴こえる重たい音楽と共にゲームは始まった。
最初はワクワクしていた名前は今ではコントローラを持ったまま固まっている。


「大丈夫ですか?」

黒子が名前の顔を覗き込んで心配そうな顔をする。

『ぜ、全クリしたらご褒美のキスをねだる権利が貰えるって、お兄ちゃんが言ってたの!だから平気っ』

平気と言うときに眉間にシワが寄って、コントローラをギリリと握りしめた名前に黒子は呆れてしまった。

「(お兄様、相当妹の恋愛沙汰に手を出しますね…。本当に、何フラグですか)」

内心でキスくらい、いつでもしてやると意気込んだ。しかし、せっかく名前の兄が立てたフラグをへし折るわけにはいかない。

『…そ、装備どうする?』

「そうですね。最初は仲間と合流すると武器は貰えますよ」


黒子がコントローラのボタンを器用に押して設定をしていく。
難易度を下げて、startを押した。途端にブツッと画面が消えてしまった。

「『あっ』」

黒子が四つん這いでテレビに近づき、接続が悪いのかとケーブルを何度も弄る。

名前もテレビの裏から見てみたりしたが、どうすることも出来ない。

「…壊れたのでしょうか?」

『コードの断線じゃない?』

機械音痴ではないが専門的な知識なんて持ち合わせていない。

「……お父さんでも呼んできます」

『お父さん召喚!?』


黒子が部屋を出ていってしまったので仕方なく名前はベットに寝転がる。

しっかりとベットメイキングされていた布団はくしゃりとなってシワが出来る。

『(お父さんになんて紹介しよう。彼女です!って言えば良いのかな?)』


ゲームの緊張から解放され名前は掛け布団を抱き枕のように抱き抱えた。制服のスカートがシワになるもの気にはしていない。ぎりぎり膝下のスカートはめくれることも、あまり無いしゴロゴロとする。

目をつむって黒子が戻るのを待つ。しかし眠気が襲い掛かってきて、本当に寝てしまいそうだ。

『(ねたら、だめ…。キスする権利…が)』

そんなことを思いながらゆっくりと寝てしまった。
部屋のドアが開いて黒子が入ってくる。


「すみません。お父さんが出掛けたらしいのでボクがなんとかします」


『んー…』

生返事をした名前に黒子は起きているものだと勘違いしてしまう。
勘違いしたことも知らずに黒子は説明書を片手にゲーム機と対峙した。

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