■ kill...
バシャンと水面にたたき付けられた。水が深くて良かった。
『くさ…、これ下水?』
地下の下だから下水というのも頷ける。しかも周りを見渡しても黒子がいない。
『…うそん』
とにかく、出ないと。耳元でザザッとノイズ音がして、そこで初めてヘッドフォンマイクに気がつく。こんなものが装備されているなんて気がつかなかった。
「名前さん、聞こえますか?」
ノイズ混じりに黒子の声が聞こえた。
『テツヤ…、なんとか』
「どっかで合流しましょう。落下の途中で装備を落としてしまいました」
元々装備が無くなっている私は苦笑いしかできない。
『とにかく、合流だね?』
「はい。恐らくボクは名前さんの真下に居ますよ」
『つまり私が行かなきゃいけないパターン?』
ですね、と黒子が言った。黒子は名前と合流する間に装備を探しておくとのこと。
「では、お互い無事に合流しましょう」
その言葉を最後にヘッドフォンマイクは黙った。
『…いくっきゃない』
決心を決めて上を見上げた。小さな穴が見える。あそこから落ちたのか。
足元には大きな穴。まさかとは思うが黒子は運よく、この穴に落ちたらしい。
『(テツヤも何か不憫だなぁ)』
制服が水を吸って重たいが、歩みだした。
下水ともなればゾンビはいないだろうとズンズンと進む。が、何かヌルッとしたものが手首を掴み、小さく悲鳴を上げた。
水しぶきを上げながら出てきたのは、水を吸ってブヨブヨに腐敗したゾンビ。
『キモッ!!触んなっ』
バキッと殴り、更に進む。いまどこら辺かも分からずに歩いていたが、よくよく考えたら黒子が落ちた穴から行けば、直通しているのでは無いかと思った。
地下牢に比べて敵の数が少ない今なら引き換えしても平気そうだ。
ぐるんっと元来た道を戻る。バシャバシャと膝下まで溜まった下水が行く手を阻むが気にはしない。
数分で穴まで戻った。少し汚いが穴へチョロチョロ流れていく下水は少し減っているような気がした。恐らく名前がいるから体積が増えて流れてしまったのだろう。
『ふぅ…、汚いけど行かなきゃ』
黒子が待っているのだ。
名前は穴へ飛び込んだ。
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