■ 1秒
食後、お言葉に甘えて先に風呂に入らせてもらった。
『黒子さん、お風呂あいたよ』
「あ、はい」
リビングで静かに本を読んでいた黒子が顔を上げた。
『あー…、明日荷物を整理しないと』
「ボクも手伝いますよ」
優しく微笑む彼は本をパタンと閉じる。表紙が少し焼けているのでだいぶ古いのだろう。
『ありがとう』
「それとボクらは若い学生なんですから名前で呼び合いませんか?」
『んー…、なんか恋人と間違われそう』
「付き合ってる方がいるんですか?」
『いないよ』
ちょっとだけ恥ずかしいと言って名前は微笑んだ。
「なら良いじゃないですか。なんなら恋人でも」
意地悪く笑う黒子。
『恋人はちょっと…、今日会ったばっかなのに』
「そうですか。残念」
『……………』
名前がホワイトボードに向き合うと水性マジックペンのキャップを開ける。
ペン先をホワイトボードに滑らせた。
"セクハラ、口説き、告白、一回百円。恋愛禁止"
「…………」
『百円頂戴』
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