■ 1秒
荷物を部屋に置き、再びリビングに集まる。
「今からボクら二人が平和に暮らすためにルールを決めます」
キリッと言い切った黒子がホワイトボードを取り出した。
『あ、はい』
「まず、お腹が空いたら共同キッチンにて自炊してください」
ホワイトボードの一番上に自炊と書かれる。
「ホームシックになったら互いの部屋を行き来してよい。以上です」
自炊の下にホームシック可と書かれた。
『……すいません、意義ありです』
そっと手を挙げると、黒子が何ですかと問う。
「文句ありますか?」
『あります。自炊は分かりますがホームシックの件は撤回してください』
いくら先輩でも一応、男女である。
「嫌です。ボク、よくホームシックになってしまうんで」
抱きまくらを独りぼっちで抱きしめて悲しむボクを方っておく気ですか、と黒子が主張する。
『しりませんよ。抱きまくら抱きしめて勝手に慈悲に浸ってください』
黒子がシュンとする。
「じゃあ、ハグだけでも…」
『もっとダメです…。大体、どこに住んでたんですか?』
「東京の帝光『電車二駅分!!』
慣れない土地とは言え、それくらいは知っている。
「お願いします!学生の可哀相な200円を守ってください」
ガタッと椅子から立ち上がり、スタスタと名前の横に駆け寄る。
『ちょ!?黒子さん!?』
「テツヤ2号を思い出すと泣きそうなんです!!」
縋る彼を無理矢理引きはがす。
『通報しますよ!?良いんですか!?つか、何ですか!テツヤ2号って!!』
「犬です!!ボクそっくりの犬です!!」
『犬っ!?』
結局、部屋は侵入禁止、ホームシックはハグに落ち着いた。
しかし、ハグは5秒だけという条件つきである。
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