■ 4秒
シェアハウスに住んでから三日、ほぼ毎日のように黒子はホームシックだと抱き着いてくる。
見ず知らずの男子に何をしているんだと思うが、これも二人の平和の為。
今も黒子は名前に後ろから抱き着いている。
『テツヤくん、抱き着いて良いのは5秒だけ。ホームシック以外は接触禁止なんだからね』
「………寂しいから嫌です」
椅子に座る黒子に座る名前。
『というか、家が近いなら帰ったら良いのに』
「そんなことしたら、お母さんに殴られます。馬鹿息子って…」
何か悪いことをしたのかと問うと首に髪の毛がふさふさと当たる。答えはノー。
ならば家出かと問うと、また首に髪の毛がふさふさと当たる。またしても答えはノー。
『じゃあ、何なの?』
黒子がため息をつく。
「勉強して大好きなバスケを精一杯して、彼女をつくらなきゃ家にいれてやらないって言われたんです」
『後者がなんか理不尽なんだけど…』
名前が呟くと黒子も、ですよねー、と言った。
「だからボクは彼女をつくるまでは一生シェアハウスに暮らすんです。…今まで恋愛は皆無だったんですよおぉ…」
『なるほど、色恋無縁な息子の孫が見たいのね。お母様は』
「…………そこまで言ってません」
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