■ 2秒
名前の鼻にティッシュが詰められ、情けない顔で事情を話した。
すると黒子は少し考えて心当たりがあると言った。
「実はこのシェアハウスが建つ前は墓地だったとか」
『え…』
「ちょうど名前さんの部屋の辺りは怨念が強くて…」
『ひっ!?うそっ!?』
黒子はニヤニヤと笑い、ヒソヒソと内緒話をするように言った。
「まぁ、嘘ですけどね」
(笑)が語尾につきそうなノリで言い放った。その言葉に名前は脱力する。
『なんだ…、びっくりした』
「どちらかと言えばボクの方が驚きですよ」
スウェットをだらし無く着ている彼。そのことが少し意外だった。
『う…、ごめんなさい』
「とは言っても貴女の鼻血の原因はボクなんですがね」
黒子がお茶を啜りながら時計を見た。深夜2時を回っている。
『その…、』
「名前さん、お化けの件ですが、それは駐車場の車のバックライトに人影が近づいて出来た実像ですから安心してください」
理科の話を始める黒子にぽかんとする。
『実像…?』
「まぁ、光源に近づくほど実像である影が大きく見える現象ですね。決してお化けではないです」
軽々と言った黒子に名前は固まる。
『じゃあ…、私が見たのは』
「ただの人影です」
ふぁっと欠伸をした黒子が湯呑みを流し台に置き、振り返った。
「だからもう遅いので寝ましょう?」
『は、はい』
おとなしく返事をして名前は部屋に入った。
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