■ ワァワァワァ!

※ヒロインが変態
※黒子が不憫

∝∝∝∝


 誠凜バスケ部のコートを眺めて、私は息をついた。
 サラサラの髪に、パッチリの瞳。ひざ小僧、指先まで見ていた。リコ先輩を。

「あの、聞いてます?」

 隣に立つ黒子が呆れ顔で私を見ている。

『黒子くんは黙ってて、リコ先輩の見えそうで見えないスカートの中身とか…、ムラムラする』

 黒子が溜め息をついて、リストバンドを着けた。

「ムラムラって…、サイアクですね」

『男子にはムラムラしないよ』

「ボクに言われても困るんですが」

『あっ、クマちゃん。…いやぁん、先輩ったらぁ』

「通報しますよ」

『じゃあ、通報される前に黒子くんのブラジャー姿見たい』

 ハァハァハァ…と息を荒くし、手をワキワキと動かしている。

「男子にはムラムラしないんじゃないんですか?」

『男の娘は別…、黒子くんは中性的だから。ちなみに私はアルカリ性』

「意味不明です」

『私の中学の時の制服、興味ない?セーラーなんだけど』

「あります。ボクは貴女に興味があります」

 私は足元のバックから早速セーラーを出した。

『そっか。ありがとう』

 セーラーを掴んで、姿勢を低くする私は、黒子に飛び掛かった。
 さすがに黒子は驚いたようで、動くことも出来ずに、私に押され、床に倒れ込んだ。
 ドタンと派手な音が体育館中に響き渡り、黒子の悲鳴があがった。

「な、ななななッ何するんですかッ!?」

『セーラー興味あるんでしょッ!?着せてあげるッ』

 黒子のTシャツを掴んだところで、私はニタァと笑う。

「ひ、人聞き悪いですからッ!というか、気持ち悪いです!なんで笑顔なんですか」

『だって服脱がすって興奮しない?』

「やめてくださいッ!ボクが言いたいのは、貴女がカントクの下着を見たいという、マニアックな性癖を持つ変態でも好きってことで、決してセーラーが好きというわけでは…」

 黒子が息継ぎも無しで言い切った。その後、我に返ったのか、カントクすみません、と呟いた。

『なんだ、黒子くんカントク好きだったの』

 キョトンとする私は黒子のTシャツをぎゅっと握り締める。

「違います」

『ごめんね、好きな人いるのにセクシャルハラスメントなんかして』

「好きな人はカントクじゃないですから。てかセクハラの自覚あったんですか」

『ごめっ…、マジで私知らなくて…』

 涙が黒子のTシャツにこぼれ落ちた。

「いや、あの、スイマセン、勘違いですから、ソレ」

『フォローなんていらないよぉ…、私女装した黒子くんが好きだから…』

「!?」

 精神的限界だと、黒子は体育館を見渡した。すると目があったのはリコだった。
 リコが口パクで何かを言っている。



"私のパンツはもう良いから、セーラー着てあげて"



「(……何かの間違いですよね)」

 黒子が日向を見つめると、フイッと顔を逸らされた。

『ごめんね、ごめんね…』
「あの、泣かないでください…、えとセーラー着ますから、だから…」

 黒子の困った顔が私に近づいて、唇に唇をくっつける。しばらくして、離れると、黒子は起き上がって、セーラーを手に取った。

「…セーラー着ますから、ボクと付き合ってください」

『……え、セーラー着てくれるの?』

「告白ではなくセーラーですか…」

『黒子くん好きいいいぃ!男子なのに、男前なのにムラムラするぅッ』

 思わず抱き着いた私に、黒子はしどろもどろとする。

「わ、ちょっ…」



 翌日、リコの下駄箱には写真が入っていた。

「ナニ、これ」

 写真にはセーラーを着崩し、スカートをめくる手とそれを押さえ込もうとしている黒子の姿があった。

「(……………)」

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