■ 二人の誓い、消して壊されはしない
そこはまるで楽園のようだった。小さな喜び、感嘆、恋愛。
二人だけの世界。
そんな、小さな自分だけの夢を見た。気がつけば昼過ぎで、誰かに会いたくて堪らなかった。
会いたい誰かは、おそらく一生会えない気がする。
暑い日差しが、カーテンの隙間から覗くと、眩しさに目を細めた。
熱はだいぶ下がったが、けだるさは残る。
"必ず迎えに行きます"
夢の中で誰かが言った。首筋の痣を撫でると、ホラー映画のお化け役のような、血まみれの彼を思い出す。
水色の髪の毛が印象的だった。夢の中の誰かも水色の髪で、写真の男の子も水色だった。
偶然なんかじゃない、きっと同一人物だとさえ思える。でも心のどこかで同一人物だと決めつけていた。
名前は起き上がると、部屋を出た。
一階に下りると、固定電話に目を向ける。点滅するランプは新着の留守録があることを知らせていた。
恐怖心が残るものの、再生ボタンを押した。
お決まりのノイズがサァーと流れる。
"もしもし、黒子です。その時までさようなら"
それだけ告げてブツッと留守録は切れた。日付は昨晩。
その時とはいったいいつなのか、分からないが、とにかく、怪奇現象は終わると思うと、酷く安堵した。
名前はその場を離れて、冷蔵庫へ向かった。
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