■ 重なる面影
名前は熱にうなされていた。疲労による発熱だそうだ。
首筋に着いた、手の形の痣は、昨日の出来事が夢ではないことを示している。
薬を飲もうと、机に置かれたペットボトルと袋を眺めた。
制服のまま、朝を迎えた名前は母親に起こされ、熱があると言われた。
とりあえず、部屋着に着替えたは良いが、今日一日は一人で頑張らなくてはならない。
母親も仕事を休むわけにはいかずに、出勤した。
窓から夏の風が吹き込む。
ベッドから下りると、真っ直ぐに机に向かった。
袋から薬を二錠取り出し、ペットボトルの水と一緒に口に含んだ。
ごくりと飲み干すと、机の引き出しに手をかける。
レールの上を車輪が転がる音と共に、開かれる引き出し。
中には火神から貰った写真が入っていた。
誠凜のバスケ部のユニフォームには11の数字がプリントしてある。
『(………この人が黒子くんなの?)』
夕べ、確かに写真の人物に会ったような気がするのに、顔がイマイチ思い出せない。
妄信することもできないので何とも言いがたいが、写真の男の子のような気がしている。
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