■ ジェミニ
空を眺めた。二人の淡い水色の髪が風になびいて、混じり合う。
「双子座って日本から見えるんですかね?」
『さぁ』
近所の土手に座って二人は夜空を仰ぐ。
「今日、黄瀬くんに双子みたいって言われたんです」
『は?』
「髪の色が同じだから、貴女と双子みたいだと言われたんです」
プッと噴き出す私が、黄瀬を馬鹿にしたような笑みでテツヤを見た。
『髪の色だけで双子って…、ウケる』
「黄瀬くんも真顔で言っていたので、ボクも言い返す気力もなく否定はしませんでした」
そう言うテツヤも真顔だ。
『じゃあホントに黄瀬は双子って勘違いしたかもね』
「確かに否定はしませんでしたから…、不安ですね」
双子の禁断の恋ッ!だとか言い触らされたら大変なことになりそうだ。
『あー…、だからふたご座』
話の冒頭の会話を私は思い出した。テツヤも連想でと呟く。
「ふたご座は英語でジェミニと言うそうです」
『何だか可愛いね。"ふたご"だからツインかと思ったよ』
土手が夏の生温い風に包まれる。夜だからか少し冷え込む。
「でも、貴女とボクが双子なら」
テツヤがジャージの懐に私を引き寄せて、温める。
そして私が驚きで顔を上げると、唇に唇が重なった。
ちゅっと可愛らしい音が聞こえて、テツヤが私の首元に顔を埋めて囁いた。
「こんなことも堂々と出来ないでしょうね」
私は熱くなる顔面を見られないように、テツヤの背中に腕を回して、抱きしめた。
『そうだね…』
双子じゃなくて良かった。髪の色が同じだけで十分だと思った。
ただの恋人で本当に良かった。
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