■ 虫刺され

 バリバリと腕を掻く。黒子は名前の赤くなっていく腕を見つめていた。

「虫刺されですか?」

『うん』

 黒子が腕を覗き込むと、ぷっくりと盛り上がった虫刺されがあった。

「痒いですか?」

『まぁ虫刺されだし、痒いのは当然でしょ』

 尚も掻き続ける、名前の手を引っつかむと黒子は困った顔をする。

「掻いたら駄目ですよ」

 と言われても、と名前は痒さにムズムズする腕を掻きたくてたまらなくなる。

『せめて薬とか塗りたい。持ってない?』

「あぁ、なるほど。実は持ってたりします」

 黒子は、そのまま虫刺されを唇で食んだ。名前は驚いて腕を引っ込めようとする。
 虫刺されを舐める感触がして、瞬間にしてガリッと歯を立てられた。

『イッ!?痛いっ!!』

 最後に一舐めし、黒子は離れた。腕には、虫刺されの上から歯型が付いている。

「良い薬でしょう?」

 控え目に笑う黒子が名前の掴んでいた腕を離した。

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