■ リップシェア

 夏休みも近くなり、周りは予定を立てはじめていた。
 火神と黒子は夏休みも部活三昧らしいが名前は暇を持て余す予定だ。
 そんなある日のことだった。

「名前って唇カサカサですよね」

 キスするとき気になるんです、と自分の唇を指で隠しながら、控え目に言う黒子に心底腹が立った。

『うるさいな。テツヤみたいに潤いたっぷりの唇じゃなくて悪かったね』

「つか黒子ってキスすんのかよ」

「しますよ。名前になら興奮します」

 どこが?とは聞けないが、名前はとにかく表情が引き攣った。

『くだらないッ!興奮とか言い方キモいし、キスが嫌ならやめとけば良いじゃん』

「おい、キモいって言われてんぞ」

「はい。ちょっと傷つきました。でも性的興奮は押さえようがないんですから…」

 真顔で見てくる黒子に名前は目を逸らした。

『だから、変な言い方をするな!』

「名前、ボクはリップクリームをいつも塗っています」

「唐突に乙女な発言すんなよ」

 黒子がポケットからリップクリームを取り出すと、名前に見せた。

『使いかけなんて嫌だよ。しかも異性だし』

「ボクのリップクリームに興奮しないでください」

『してねぇよッ』

 机をドンッと殴った名前が前のめりに、黒子に近く。
 黒子はリップクリームのキャップを開けた。

「ほら、また唇がカサカサですよ」

 ふにっとリップクリームを名前の唇に塗りたくった。

『ッ!?』

「黒子、付けすぎだろ。苗字の口が脂ギッシュになってんぞ」

 黒子が手を止めて、名前の唇を見た。

「あ、ホントですね」

 黒子が名前の頬を両手で包むと、そのまま口づけた。

『!!??』

 そして付けすぎたリップクリームを自分の唇に付けるようなキスをする。触れているだけなのに、名前は目をカッと見開いて、ガチガチに固まっていた。

「バカップルはあっちいけよ」

 火神が喚く声すら名前には届かなくなっていた。

[ prev / next ]
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -