■ アフタヌーンティーをきみと
午後のアフタヌーンティーを二人で飲み、くだらない会話を交わす。
陶器のカップが、小さくカチャカチャと鳴る音だけが聞こえていた。
こんな優雅なカップルはあまりいないだろう。二十歳を過ぎると、こんな風な時間が多くなってしまった。
別に不満などはない。
クッキーを一つ、摘んで口に運ぶ。
クリーミーなバターの味がする。
そして紅茶を飲み干すと、何だかホッとした。
「名前さん、お代わりはいかがですか?」
紳士的な黒子の気遣いに名前は頷いた。
『じゃあ、もう一杯だけ』
「はい」
ティーポットを片手にわさわざ席を立ち、名前の隣まで来て、紅茶を注いだ。
『…最近は昔みたいに馬鹿なことしなくなったよね』
寂しそうに言えば、黒子は驚いた顔で名前を見た。
「そうかもしれませんね」
『テツヤの下ネタとか面白かったのに』
黒子が心外だと言って、ティーポットを置いた。名前がカップに手を伸ばすが、それより早く黒子がカップを取ってしまう。
『…飲むなら自分のカップで飲んでよ』
「どのカップで飲んでも同じです」
ごくりと黒子の喉仏が上下して、すぐにカップが机に置かれる。
黒子が屈んで名前の頬を両手で包み込む。
そして深く口づけた。キスすることに全く抵抗のない名前は口を少しだけ開く。
『…んむっ!?』
普段なら黒子の舌だけが入ってくるのに、少量の紅茶が流れ込んできた。
いつもと違うキスに名前は目をつむって頬を朱に染めて、堪えるように黒子のシャツを握る。
互いの唇が離れた。
「……カップならどれも一緒です」
『………ばか』
いつまでも子供じゃないと黒子は囁いて、耳にキスをした。
title…シンガロン
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