■ 羅生門ごっこ

「羅生門ごっこをしましょう」

 私は思わず噴き出した。黒子はいつもと変わらぬ表情で私を見ている。

『黒子、頭打った?』

 昼休みに屋上で弁当を食べ終わったところで黒子の提案が浮上した。

「通常運転です。ほら、羅生門といえば高校生ならば誰しもが読む文学です」

『そうだね』

 そこで!と黒子が声を荒げる。ビクッと私の肩が驚きで跳ねた。

「馬鹿で可哀相で馬鹿な火神くんに羅生門を現代風に教えてあげるんです」

『馬鹿って二回言ったね』

 黒子は尚も続ける。

「今回は火神くんに見せる前のリハです」

『やらないよ』

 配役を発表しますね、と黒子は国語の教科書を出す。準備良いな、とか思いつつ黒子を眺めた。

『配役って言っても二人しか出てこないじゃん』

「そうですが何か?因みに下人の役はボクです」

 確かに黒子と羅生門に登場する下人は年齢的に一致する。

『じゃあ私は………老婆?』

「はい」

 真顔で言い切った黒子は私と向かい合わせに立つ。
 有無を言わせぬまま、黒子は教科書片手に台詞を棒読みした。

「ならば、ボクが貴女の引き剥ぎをしても文句はありませんね?」

『いきなりだな!物凄い話が飛んでる!!しかも台詞が黒子風になってる!!』

 下人が羅生門にいる理由さえ分からぬままではないかと私は黒子を怒る。

「オチさえ理解できればいいんですよ。あ、続けますね」

『オイッ』

 ツッコミも虚しく黒子は無表情で私の制服に手を掛けた。

「………………」

『何しやがる』

 ベシッと頭を叩くと黒子は冷静に答える。

「ここからは下人も老婆も台詞はありませんから。それと下人は老婆の着物を剥ぐ場面ですからね」

『それがやりたかったのか』

「まさか。ボクがやりたかったのは、この先です」

『全裸で死体に埋もれろと?』

 黒子は違うと否定し、澄まし顔で断言した。

「着物を剥いだ後に老婆役の貴女がボクに縋り付くシーンを『サイテー』

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