■ 机と椅子をぶっ飛ばせ
『黒子くん、この本ありがとう!!難しかったけれど、面白かった』
黒子の横に立つ名前はウェーブのかかったロングヘアーで、赤い髪は毛先に向かうほど深い色になりグラデーションを描いていた。
「そうですか」
『これの続きってあんの?』
火神の妹的存在で、幼なじみだそうだ。アメリカへ行く前、仲が良かったそうだ。
性格がよく似ていて、発言も一言で表現するなら馬鹿に等しい。
名前自身も火神同様に偏差値が驚くほど低いのだが、気にしている様子は無い。
「続きもありますよ」
『ホントか!?』
最近は本を読みはじめた名前は国語の成績を上げようと頑張っている。
「明日持ってきますね」
『しゃあッ!!』
男勝りではあるが恋愛沙汰には敏感である。恋バナをするのが好きだとか。
火神がたくさんのパンを抱えて購買から戻ってきたのを見て名前は目を見開いた。
『タイガ、ちょっと多くない?』
「あ?こんなモンだろ」
「豚まっしぐらですね」
んだとッ!!と黒子につかみ掛かる火神の頭を名前が叩いた。
『ちょっと!!アタシの黒子くんに何すんだよ!!』
「いつから黒子が名前のになったんだよッ!!」
『ハァ!?そんなの出会った時からに決まってんじゃん!!タイガと違って紳士で男前で小さいのが良いの』
「小さいは余計です。あとボクはモノじゃないですから」
淡々とつっこむ黒子を無視して更に喧嘩は発展する。その際に黒子は名前に抱き寄せられた。椅子に座っている黒子が立っている名前に抱きしめられれば、胸に顔を突っ込む形になる。
『タイガは黒子くんをアタシに取られたくないんでしょ!?アハハハッ!!ばーかばーか!!』
「テメェ…、つか黒子がピクピクしてんだけど」
もはや呼吸困難まっしぐらの黒子がくたりとしているが、名前は抱きしめたまま火神のすねを蹴った。
「イッテェッ!!」
火神の額に青筋が浮かぶ。名前は黒子を守るように抱きすくめる。
『黒子くんはアタシのッ』
「じゃあ名前はオレのもんだッ!!」
ガシャンッと黒子の机を蹴り飛ばした。
しばしの沈黙にクラス中が騒然とする。無意識に告白してしまった火神はハッとし、目線をさ迷わせた。
黒子はもうすでに事切れており、動かなかった。
「(ボクって不憫なんでしょうか…?)」
チビと言われ、モノ扱いされ、意思とは裏腹に名前の胸に顔を突っ込み、挙げ句の果てに火神には自分の机を蹴られる。
机から教科書が落ちる音がした。
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