■ 秘密の関係

 ぶすっとした顔で名前は腕を組み、椅子に座っていた。足も組み直すと、面倒臭そうに机の上のものを眺めた。

『黒子、これはどういうこと?』

 斜め後ろに控えている黒子はただ無表情で紙面の通りでございますと言った。
 名前は黒子を睨みあげると、机に散らばった紙を丸めて、放り出した。

「…名前さま、行儀が悪いです」

『うるさい』

 黒子が紙を拾い上げると、真っ直ぐにごみ箱へ捨てる。

「しかし良い殿方なのでしょう?ならばお見合いをしてみれば良いのでは」

 名前が力任せに机を殴った。

『それは紙面上では良い殿方かもしれないけれど、本当はどうかなんて分からないじゃない!』

 助言しつつ紙を捨ててしまう黒子の意図が掴めない。名前はため息をついて、ソファに座った。

「ため息は良くないです。老けますよ」

『口を慎みなさい』

 黒子は失礼いたしましたと頭を下げるが、口元が緩んでいる。
 絶対に失礼だとは思ってはいないだろう。

『……………』

「………その様子なら大丈夫でしょう」

『ハァ?』

 名前は片方の眉を上げて、意味が分からないと言った顔をした。

「他の殿方の所へ行く心配は無くなりましたね」

 ワゴンにあるティーポットを持って薄く微笑む。

『…当たり前でしょう』

「捨てられると思いましたよ。執事として助言も必要なので死ぬかと思いました」

『死ななくて良かったね』

 ティーカップに優雅にダージリンを注ぐと、丁寧に名前に出した。

「まったくですよ」

 執事ともあろう立場である黒子が名前の横に座るが、名前は咎めない。

『寧ろ私が心配なくらいだっつの』

「何がですか?」

『他の女に媚び売ってないか』

 心外だと黒子は言った。二人は指を絡めて、体を寄せる。

「他の女性に興味はありませんから。それより駆け落ちしませんか?」

 ちゅっと名前の頬に唇をつける。

『しねぇよ』

 口が悪い名前がツッコミがてら言った。

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