■ 腕のいいスナイパー

※マフィアパロ
※暴力表現
※ちょっと狂愛気味
※真っ黒子さま降臨


 もう人の住んでいない家の三階から、窓の枠に長い銃口を置いた。
 弾を装填し、しっかりと赤い頭の男を狙った。引き金に指を掛け、一気に引く。
 重い破裂音が鼓膜を激しく揺らし、手に伝わる反動が女性である名前には強すぎて腕が軽く持ち上がってしまう。
 真っすぐ赤い頭の男を貫くはずなのに、掠りもせずに地面へ銃弾が飛ぶ。赤い頭の男の周りで敵襲だと騒ぎ立てる下っ端がいた。
 再び弾を装填する。その時だった。
 後ろからスウィングするように名前の首に蹴りが入った。

『あぐっ!!』

 部屋の窓から隅まで転がり、滑る名前は痛みに顔を歪めた。

「おや、随分と可愛らしいスナイパーですね。もっとゴツい男性を想像してました」

 落ち着いた口調が聞こえて名前は上着に入れていた、ミニショットガンを寝転んだまま両手で構えた。

『動くなッ!!』

 この体制なら、ミニショットガンの反動に堪えられるという魂胆があったために迷わず銃口むけた。寧ろ立って撃つより有利だ。相変わらず外は敵襲だと騒がしい。

「落ち着いてください」

 水色の髪を揺らして、黒いスーツに身を包んだ彼は優しく微笑みかけた。
 次の瞬間、腕と顔面に衝撃が走る。床を滑っていくミニショットガンが視界に映り、またもや蹴られたのだと理解した。投げ出された右腕に彼の足が乗る。そしてギリギリと右腕を踏み締めた。

「手違いで顔まで蹴っちゃいました」

 大丈夫ですかと笑顔で言い、名前に跨がるようにして動きを制した。右腕には足の変わりに膝を乗せ動けなくする。
 名前は涙の浮かぶ目で黒い笑みを浮かべる彼を見つめる。

『大丈夫じゃ、ないっつの!!』

 今度は左手でナイフを取り出す。首元に一発刺してやろうと思ったのだが、呆気なく右手を掴まれ、本来曲がるべき所とは反対に曲げ、捻った。

「強情ですね。強気なのも良いですが、自分の心配をしてください」

 ベキッと肩から音がし、脱臼する。痛みに名前は声もあげられずに、ダラリと左手を床に垂らした。

「いいですね、その顔。痛いですか?」

 膝で右腕をグリグリと痛め付けながら、目を細めた彼は、白い指先を名前の頬に滑らせた。率直に思う。

『(こわい…、だれか)』

 底知れぬ恐怖に震えた。

「震えちゃって可哀相に。でも、大丈夫ですよ。ボク、腕の良いスナイパーが欲しかったんですよね」

 彼の幼さを残す整った顔が近づき、名前の唇を舐める。名前は涙を流して、ガタガタと震えた。

「今日からボクのモノです」

 うっとりとして言う彼は名前の髪を撫で付けた。

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