■ 夏の日にボクらは恋した

 気がつけば屋上でサボっていた。別に青峰がやさぐれてしまったからではない。と勝手に自問自答していた黒子だが、数日前に青峰お暇を頂いたわけである。
 要は相棒に捨てられたのだ。黒子のバスケは一人ではプレイ出来ない。全中三連覇したのが三日ほど前の話だ。黒子は何とも言えぬ悔しさがあった。

『テツ』

 貯水タンクの隙間に座っていた黒子が見上げると幼なじみの姿が見えた。

「…………」

『なんて顔してんの。大丈夫?』

 彼女の手が黒子の頬を包む。黒子はただ一言辛いと言った。

「ボクは…、……バスケが嫌いだ」

『へぇ。小学校の時、ミニバス好きって言ってたのに』

 それはそれと黒子はバツが悪そうな顔で言った。

「………だって」

『言い訳するくらいなら退部したら?テツがいないとバスケが出来ないってアイツらも気づくよ』

 話の趣旨を言った覚えはないのに分かっている彼女は凄いと思う。

「それじゃあ、ただの自惚れです」

『良いじゃん。自惚れで。私だって自惚れてるよ』

 黒子が何にと問うと、彼女は黒子を抱きしめた。そのことに目を見開く黒子。

『テツに愛されてるってね。別にね、本当はテツの恋愛対象じゃないことくらい分かってるけどね、幼なじみとして好かれてるんだって思えるから』

 だから勝手に自惚れていると笑った。どこまでも強い彼女を慈しむように抱きしめ返す。

「……貴女は凄いです。こうやって抱きしめ返すと、あぁ、こんなにも肩幅が違うのだと実感します。小さい貴女はボクには恋愛対象の範囲内ですよ」

 素直に述べる黒子は自分の首元に顔を埋める幼なじみの耳が赤くなるのが見えた。

『……なによそれ』

「ボクの貴女に対する自惚れです」

 黒子から上半身だけを離れさせ、膝の上に乗っている彼女は黒子より少し目線が上になった。

『テツって優しいよね』

「貴女だってそうじゃないですか」

 ただ互いを愛おしそうに見つめ合い、唇を重ねた。
 翌日、黒子はバスケ部から姿を消した。

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