■ 夢現

 保健室のベットに横たわってどのくらい経ったのだろうか。名前はぼやける視界を何とかしようと目をこする。
 すると、ベットの偏った重みに気がつく。誰かが名前の横に寝転がっていたのだ。
 鮮明になっていく視界に映ったのは淡い水色と長い睫毛、薄い唇に、にきび一つ無い綺麗な肌。

『……テツ』

 幼なじみの彼が何故保健室のベットで、しかも名前の横で寝ているのか。
 名を呼べば彼は目を開ける。

「名前…」

『ん』

 黒子がギュムッと名前を抱き寄せると、布団を深く被った。
 二人分の体温に包まれ、名前は再び眠りにつきそうになる。ウトウトとしていると黒子がもぞもぞ動く。ちょっと寝苦しそうだった。
 眉間にシワを刻んで、名前を抱き枕のように抱えると寝心地が良くなったのか、スピーと寝てしまう。
 名前も黒子の胸板に頬をこすりつけるように押し付けると、目を閉じた。
 数分もしないうちに黒子は名前と入れ代わるように目をパチリと開ける。

 抱き枕にしている名前の顔を見ると、だらし無い顔で寝ていた。

「………………」

 ジッと見ていると名前の口から涎が垂れてきた。黒子は汚いと思いながら、ハンカチ取り出そうとしたが名前が起きてしまうと思い、動きをとめた。

「……………はぁ、」

 黒子は名前の頭に手を添えて、口元を舐める。女の子特有のムチムチとした頬を舐め、唇にたどり着く。垂れてしまったのなら舐めれば良い、と思ったのだ。

『んー…』

 ちゅっと口づけていると、名前が目を開ける。ぼんやりとしている名前の目は黒子を見たあと再び閉じてしまう。

「(寝ぼけてますね)」

 いつまでも無防備で夢現な幼なじみの額にキスをした。


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