■ 8秒

 黒子が二日酔いで寝込んでいる間に、名前は携帯のメーラーを開いた。
 宛先は火神だ。
 画面をタップすると、すぐに送信した。
 寝室に戻ると、黒子の背中にタツヤが跨がっており、自分の髪の毛を弄っていた。

『タツヤ、パパは今ね、体調悪いからどいてあげて』
「・・・・ひゃい」

 寝癖が微妙に残る頭を揺らして、黒子の背中を踏み付けながら、ゆっくりとベッドから降りた。
 黒子は平気なのか、普通に寝返りを打って、名前を見上げた。

「出掛けるんですか?」

『ううん』

 ベッドに近づくと黒子に腕を引かれる。

「・・・名前」

 名前が膝をついて、顔を近づける。
 黒子の腕が名前の後頭部に周り、キスをした。

『ん・・・・』

 自然と目をつむった名前は、黒子の頬を手で包む。淡い水色の髪が、一本一本反射して、綺麗だった。

「名前・・・・」

 角度を変えて、食むようなキスを繰り返した。
 名前はもっとと、黒子に唇を押し付けた所で、洋服のシャツをタツヤに引っ張られた。

「まんまぁ、タイガーれすぅ・・・」

 大人しく落ち着いたタツヤの発言に黒子と名前は、カッと目を見開いてバッと離れた。
 確かにタツヤはタイガーと言った。思い当たる人物は一人しかいない。
 恐る恐る、寝室の出入りを見た。

「よぉ・・・・、お前ら朝から盛ってんじゃねぇよ」

 火神が呆れ顔で立っていた。
 黒子は寝返りを打って、寝たふりを決め込む。
 名前は目を泳がせて、タツヤを引き寄せた。

『あ、あれれ〜?なんで火神くんがぁ・・・・、』

 火神はスポーツバックからバスケットボールを取り出した。
 同時に火神の後ろから、サラサラの髪の毛が覗く。

「タイガ、どいてよ。俺はタツヤにおはようのキスをしていない」

 ドンッと火神を押し退け、氷室が現れた。

『ひ、氷室くんまで・・・』

「やあ、名前さん。good morning」

 チュッと頬に氷室の唇が触れた。
 すると黒子が布団越しに、変なオーラを醸し出す。

「・・・・married woman」

 ドス低い声で、黒子が何やら英単語を言った。
 火神は黒子に対して、腰を抜かしそうになるくらいに恐れを成した。

「くろ、こ・・・?お前、そんな単語どこで・・・・・」

 一方、氷室は良い笑顔でベッドに近づく。

「やぁ、黒子くん。good morning!ははっ、やだね。人妻なんて人聞き悪いよ?」

「いくら氷室さんでも許せません!」

 バッと起き上がった黒子は氷室につかみ掛かった。

「黒子くん、落ち着いて」

 氷室が黒子の頬に唇を重ねた。
 黒子は目を白黒させ、名前は目を指先で隠す。

「黒子くん、アメリカはこれが普通なんだよ」

 黒子は顔色を変えた。
 白い肌が青白くなり、口元を押さえた。

「ひむろ、さ・・・・、おえっ」

 嗚咽を漏らした黒子は、わなわなと震える。
 さすがの氷室も驚いたのか、目を見開いた。

「黒子くん、その反応はないでしょ。リアルにオエッとか言って・・・」

「黒子、ついにゲイになったか」

『私はホモ好きだよ。腐女子じゃないけど』

 口々に会話する彼らを差し置いて、黒子は背を向けて震える。

「オエッ、おぼろろろろ・・・・・」

 黒子が戻した。

「「・・・・・」」

『あ、テツヤは二日酔いなんだったね』


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