■ 7秒

 名前が二度寝から覚めると、黒子がタツヤと遊んでいたが、二日酔いなのか顔が真っ青である。

『はよ・・・』

「おはよう、ございます」

 黒子が積み木を一個、凱旋門の様な形のタワーに乗せた。グラグラと揺れる積み木のタワーを興味津々で見ていたタツヤは、観察するように目を見開いて見ている。

『大丈夫?』

「見てわかりませんか?」

『・・・・うん、分かる』

 黒子が頭が痛いと言って、ベットに潜り込む。
 酒に強い名前と違い、黒子は普段飲まない酒にやられたようだった。
 名前が苦笑いをしながらベットから下りると、タツヤをくしゃりと撫で、着替えを始めた。
 黒子はそのようすを布団から頭だけを出して見ていた。

「あの、着替えるなら別室で着替えてください」

『はぁ?夕べは散々ピ――――しておいて、その言い草は無いでしょ』

 モザイクが掛かった名前の発言に黒子は目を丸くする。
 寝癖だらけの頭が揺れ、心なしかタツヤの真ん丸な瞳が黒子を見つめていた。
 そのことがものすごく気になったが、今は現実に頭を追いつかせることの方が最優先である。

「待ってください。まさかボクは名前を襲ったんですか!?」

『未遂だけどね』

「まったく覚えてません!!」

『べろべろに酔ってたしね』

 黒子が頭を押さえて、布団にうずくまる。
 それが二日酔いのせいなのか、未遂で終わったことに対する何らかの感情の揺れかは分からなかった。

「ボク、何かへんなこと言ってませんでしたか?」

 名前はズボンを履くと、少し考える素振りをしてみる。

『あー、あまり覚えてないや。でも変態チックなことは言ってたかも』

「もういいです。忘れてください。ボクは意識がある時に襲いたいです」

『黙れ』



∝∝∝



 黒子が寝室で寝込んでいる間、名前は物置部屋を訪れていた。
 荷物はまだ少ないが、それでもキャンプのセットやバーベキュー用のコンロが置かれている。
 名前が手前にあったダンボールからバスケットボールを取り出した。
 以前、火神がタツヤの出産祝いにくれたものだ。少し大きくなって、ヨチヨチ歩きが上手くなったら渡してやってくれと言われた品物だった。

 黒子は凄い選手だった。いや、今も凄い選手のはず。きっとタツヤも良い選手になる。

 名前はボールを拾い上げてタツヤの名を呼びながら出て行った。

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