■ 3秒

 パラソルの下でタツヤが寝てしまった。3歳になるタツヤの手を握りながら、頬が緩みそうになる。

「名前」

『なに?』

 くるりと振り返ると黒子が目をカッと開いて、日焼け止めクリームを手に伸ばしながらにじり寄ってきた。

「…日焼け止め、塗ってあげます、ハァハァ…」

『落ち着け』

 だいたい黒子の手にある日焼け止めクリームの量はハンパなく多い。

「………じゃあ塗ってください」

『自分で塗れ』

 黒子は少し困った顔をして、名前を見た。

「お願いします。別にエロいとかボディタッチとか、スリスリしたいとか、ピ――――――なこととか、変なことは考えてませんから。」

 真顔で言い放った黒子に名前はドン引きしつつ、仕方ないと腕を出した。

『はやくしてね。恥ずかしいから』

「え、背中じゃないんですか」

 ポカンとする黒子の頭を叩く。名前の服装は普通のノースリーブのシャツに膝丈のスカートだ。背中に日焼け止めクリームを塗る必要はない。

『腕だけでいいの』

「…え、足は?く、首は?顔は?…どうするんですか…?」

 この世の終わりのような顔で黒子が、わなわなと震える。名前はタツヤのムチムチの手を触りながら、黒子を睨む。

『ヘンタイなこと考えてるテツはいらないの。いつもの天然キャラがいい』

「後半は聞き捨てなりませんね。というか男は見んな変態なんですよ」

 スッと構える黒子は、目を細めた。名前も対峙するように構える。

『…テツ、貴様何を考えている』

「ハッ、名前のスカートの中のパンツの柄を想像してました」

『キサマァ…』

「因みに、青峰君と賭けをしています。変わらぬ花柄パンツだと願ってボクは、五千円を賭けるのです」

 黒子が名前の腕をガッと掴むとヌリヌリと日焼け止めを塗り込む。
 名前は黒子の腹を蹴ると、サイテイと怒る。

『テツがそんなエロエロ魔王だとは思わなかった!!』

「魔王なら赤司くんですね。きっと凄い性癖を持っていると思います」

『きっと!?』

「あ、花柄パンツ」

 黒子がスカートをめくり、名前が悲鳴をあげる。タツヤが驚いて泣きはじめ、黒子は名前を腕の中に押さえ込む。

『タツヤが泣いちゃった。離して!』

「待ってください、青峰君に証拠の花柄パンツの写メを送らなければ…」

『送るなッ!!』




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