■ 愛しているよ、

 名前が家の前まで来るとベチョベチョの二人がフラフラとちょっかいを出し合いながら歩いていた。

「はぁ、はぁ…黄瀬くん、はぁ、かんね、ん…して下さい」

 息絶え絶えの黒子に対し黄瀬は青ざめた顔で腹を庇いながら手を振り回す。
 

「だ、れが、するかっス…」

『……………』

 二人に会えたのは嬉しいが、もうすぐでどちらかをフらなくてはならない。その運命を二人は知らないのだから悲しいのである。
 嬉しさに並行して罪悪感が募る。

『ふ、二人とも!!』

「「!!」」

 名前の声に反応する。黒子と黄瀬は嬉しそうな顔をした。

『………あ』

 勢いで声をかけたが何を言えば良いか分からなかった。焦りと不安、嬉しさを勝り罪悪感から冷や汗が流れた。

『…ごめん。帰って。まだ、伝える日じゃない…』

 自分勝手なのはわかってるし、自惚れているのかもしれない。それでも待っていてくれた彼らに今、合わせる顔は無い。
 名前は家に入って行った。そんな名前を見て黒子は溜め息をついて黄瀬を睨んだ。

「ボクの家、近いので行きますか?」

「…一時休戦っスね」

 とぼとぼと歩き出した二人を2階の窓から名前は見ていた。






***






 タオルを貸してくれた黒子に感謝して、黄瀬は頭をガシガシと拭く。

「黄瀬くん。ボクがもしフラれたら慰めてくださいね」

 黒子が唐突に言うものだから黄瀬はブッと吹き出した。

「なに言ってんスか!!」

「………怖いんです」

 そんなことは黄瀬だって同じだ。

「俺だって怖いっス」

 互いにフラれた者同士で、その貼られたレッテルは消えるわけではない。

「もし、フラれたらその時は…」

 黒子が消えそうな声で言えば黄瀬は天井を見上げて
「俺もその時は慰めてほしいっス」と言った。

「…持つべき者は友。…フラれたら同盟結成ですね」

「なんか嫌っ!その同盟」

 残り三日。ボクたち、俺たちの恋は始まるか終わるか決着がつく。
 名前が慣れないバスケを練習してくれているのを知って嬉しかった。
 共に覚悟を決めて三日後に会おう。


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