■ アンドロイドは嬉しかった
小学校低学年の時の話。
『私ね、〇〇くんが好きなの』
精一杯の告白は儚く消えた。ブスは興味ないと一言で終わった。泣きもしなければ笑いもしない。そんな名前が小学校を卒業する頃、〇〇くんから告白があった。
「あの時フッてしまったけれど、今はとても好きで『別にアンタなんか興味ない。消えてくんない?二度とそんなマヌケ面見せないで』
ざまあみろと内心で罵倒し、彼をこっぴどくフッた。きっと人の気持ちなんて知らないし、無表情しか知らない名前には、オブラートに包むという考えは無かったから、そんな言い方をしたんだろう。
それから数日して春休みが訪れ、アンドロイドの黒子が来た。その時からかもしれない。自分がおかしいと思えた。まるで、あの時告白した彼に抱いた感情とそっくりで驚いた。
悔しいが彼は人間ではないし、大人っぽい彼と自分では釣り合わない。だから気持ちに蓋をした。
黒子が何を隠していようが、ただ一緒にいられるだけで十分だった。
『テツ…ヤ……』
「はい」
目が覚めると気持ちの良い朝で、名前は無意識に黒子の名を呼んでいた。
『あれ…?あさ?』
「はい」
体がじめじめして汗くさい。気持ち悪さに起き上がる。
『なんでテツヤが私の部屋に…』
「うなされている声が聞こえたので」
ずっと部屋にいてくれたのだろうか。ベットの端に腰掛ける彼の手にはタオルが握られていた。
そのタオルで汗を拭ってくれる。
『……ありがとう』
「……マヌケ面で二度と見たくない人物とは誰ですか?」
唐突に聞かれ、寝言として聞かれたのかと思うと恥ずかしかった。タオルが離れた時に名前はポツリと答えた。
『小学校のとき好きだった男の子』
「今も好きなんですか?」
『まさか』
有り得ないと名前は素っ頓狂な声を出した。
「そうですか。…大分汗をかいてしまいましたね。シャワーを浴びてきたらどうですか?」
『そうする』
昨日、遊園地に行ったが名前は途中で寝てしまった。多分黒子がおんぶして帰って来たのだと思う。
なんとも恥ずかしい話だ。
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